2009/12/07

明暗を分けた二人の日本人選手 GPF 2009 男子 FP 考察 その1



《-五輪に4回転は必要か?- モロゾフの戦略を考察する》

お次はFPです。

といっても、ここでは二人の日本人選手のプログラムについて考察していきましょう。
まずは織田選手から。



まずは織田選手、五輪内定
おめでとう!(*´∀`)o∠☆゚+。*゚PAN!!★゚+。*゚ございます。
これで織田君も一安心ですよね。
4年前のトリノの雪辱を果たしたのではないでしょうか。

FPのほうは、残念ながら後半の2つのアクセルでミスが出てしまいましたが、
それ以外のジャンプはきちんと決めて、見事総合2位。
グランプリファイナルの表彰台を見事確保しました。

今季の織田選手は本当にすごいというか、
ジャッジの評価もうなぎのぼりで、TESもPCSも高いですよね。
それに、もともと織田選手はジャンプの質がとても高い。
織田のジャンプは「落ちてくる」のではなく「おりてくる」と評されるように、
まるで羽のように舞い上がって、ふわっと降りてくる。
おそらくひざが柔らかいのでしょうね。
着氷するときの衝撃がとても小さいのでしょう。
回転不足もないし、見ていて本当に美しいです。

その「質の高さ」はきちんとプロトコルにも反映されており、
3A-3Tのコンビネーションジャンプには2点の加点がついていました。

確かにインフレ気味の大会ではありましたが
(もしかしたら地元上げもあるのかもしれませんが)、
それでも、これだけ高く評価されているのはすごいと思います。
バンクーバー五輪に向けての調整は万端のようです。

そして、織田選手のプログラムを見て思うのは、
ジャッジは、ジャンプの難易度を重視するのではなく「質」を重視しているということ。

この傾向はオリンピックでも変わらないと思います。

今回のGPFも4回転を飛ばない選手が表彰台を占めました。
4回転を飛ばない男子なんて・・・と批判もありますが、
逆に、それだけ4回転はリスクも大きいということです。

よほど確実に飛べなければ、容赦ないダウングレードにさらされ、
それのみか、PCSや加点という部分でも大きく下げられてしまう。

今シーズン、織田選手・安藤選手が大活躍していますが、
なぜこの二人の選手が強くなったのかというと、
やはりコーチのモロゾフによるところが大きいと思います。

特に、二人に大技を捨てるよう説得したことはでかい。
二人とも4回転にこだわるあまり、ほかの要素やジャンプがおろそかになり、
そのために点数を落としていることがほとんどでした。

しかし、モロゾフはいまの採点システムの特徴をしっかりと理解し、
もはや大技狙いでは五輪優勝は無理だということを悟ったのでしょう。
「4回転にこだわるなら美姫には教えない」と強い言葉で
大技をあきらめさせ、
逆により確実な、ダウングレードの少ないジャンプを飛ばせた。

その結果、二人のミスは激減し、代わりにPCSやTESが上がった。
安藤選手はキム選手との対比があるので比較的下げられてますが、
それでも、昨シーズンに比べたらかなり上がっていると思います。

モロゾフが戦略家だと思うのは、
しっかりと新採点システムというものを理解し、分析していることです。

確かにいまの採点システムはおかしなことばかりです。
スポーツというものは人間の限界に挑むもの。
本来ならば、フィギュアスケートもそうあるべきなのですが、
採点システムが変わったせいで、
以前の競技とは似ても似つかなくなりました。

いまのフィギュアスケートは
①大技に挑んではいけない。
②無難な技を確実に決める=質を高める。
③つなぎを多く入れなければいけない。

と、まさに時代に逆行するようなものとなっております。

それが正しいかどうかは別としても、
オリンピックで勝つためには、ルールにのっとらなければならない。
ルールを無視すればどんなにすばらしい演技をしても優勝はできなくなります。

浅田真央選手のスランプも実はここにあるかと思います。
大技の固執するあまり、本来ならば確実にこなさなければならない
スピン・スパイラル等の要素を落としてしまうのです。
その結果、キム選手のような無難な技しかできない選手が一人勝ちのように勝ってしまう。
キム選手が浅田選手よりも強いわけではありません。
キム選手のほうがよりルールを「理解し」、
そのルールで確実に勝つためのプログラムを滑っているだけです。

そして、モロゾフはおそらくカナダの選手たちのプログラムを研究しながら、
安藤・織田両選手のプログラムを作っている。

二人の今シーズンのプログラムの特徴的なところは
やたらと止まっているところが多いところ。
よく批判されますが、キム選手のプログラムもそうですよね。
止まっているところが多い。
しかし、それは別に点数を下げることにはならない。
むしろ演技点を上げさえする。
モロゾフはこの点に注目して、よりポージングが多いプログラムを作っている。
実はこのポージングをより多く入れるというのは
選手にとっても利点があり、プログラムの途中で休むことができます。
そのため、次のジャンプや要素を行うときの失敗が少なくなる。
安藤・織田両選手が今シーズンあまり失敗が見られないのも
このポージングが多いのもひとつの要因かと思います。

そして、何よりも彼らが今季強いのは、
飛べるジャンプしか飛んでいないこと。
安藤選手は今季3-3のコンビネーションを一度も飛んでません。
飛べばダウングレードをされることが分かっているからです。
2A-3Tのコンビネーションさえも、実際の試合では2A-2Tに下げて飛んでいます。

織田選手も同様です。
今季は4回転を一度も入れていません。
そのため、以前のようなジャンプミスが少なくなりました。
やはり最初に4回転を失敗してしまうと、プレッシャーがかかるのか、
ほかのジャンプを失敗しがちになる。
選手にはそういう傾向が多いです。
しかし、モロゾフはあえて4回転を回避させることで、
ほかのジャンプを確実に飛べるようにさせた。
もともとジャンプの質の高いことで知られている織田選手のこと、
飛べるジャンプを飛べば確実に点数は取れるのです。
事実、プロトコルを見ても織田選手のジャンプの質が
いかにジャッジに高く評価されているのかが分かります。
2点もの加点があれだけたくさん付いているのは、
今季は織田選手ぐらいじゃないでしょうか。

それに、モロゾフは元アイスダンス選手のコーチですから、
「つなぎ」を入れるのはお手の物です。
なので、点数につながりやすいつなぎをきちんと入れて
確実に点数を上げている。

モロゾフの戦略が見事に成功したシーズンだと思います。

《つづく》


2009/12/06

東京 グランプリファイナル 2009 男子 SP 感想 -簡単に-



浅田選手のロシア杯考察をやるやるといいながら
いろいろと忙しくてぜんぜん書けないでいます。
このままでは、まったく欠けないまま全日本に突入してしまうわ…(´-∀-`;)
なんとか2,3日中に時間を作って書きたいと思います。

その前にグランプリファイナルの感想をいくつか。

今年の開催は日本でした。
いいですね~、東京。
ぜひ見に行きたい…ε-(o´_`o)ハァ・・
現地で観戦された方も多いのではないでしょうか?
実はいろいろと拙ブログで考察を書いてはいますが、
生で見たことないんですよね、スケート。
ジュニアとか、本当にアマチュアの人のやつなら何度もあるのですが・・・
そのくせ、えらそうにいろんなことをいっちょまえに書いたりして・・・
本当にいったいなんてやつなんだとわれながら思ってしまいます。

ゴメンナサ──・゚・(。>д<。)・゚・──イ

ま、そんな奴ですが、もしよろしければ少しお付き合いいただければと。


まず、男子のSPから。

特に、今回いちばん印象に残ったのは、ライザチェックの演技でした。




今年の世界選手権で優勝してから、何かが変わりましたよね、彼。
オーラというんでしょうか。すごく輝いて見えるんですが。
そして、あまりにも輝きすぎて、
エヴァの使徒か、デスノートのリュークに見えてしかたがないwww

長身を生かしたダイナミックな動きは、以前は少し窮屈そうに見えたのに、
今シーズンのライザはより大きく、逆にリンクを狭く見せるほどに迫力があります。
やはり世界王者になったという自信が
彼の演技を確かなものにしてるのでしょうね。
ジャンプもすばらしいし、ステップもいいですね。
ライザって、本来ならばすごく不利なスケーターだと思うんです。
フィギュアスケーターというのは身長が低いほうが、ジャンプを飛ぶのに有利ですから。
その点、ライザは188センチという長身ですから、
ジャンプを飛ぶときの負荷というのはハンパないはず。
一時期、伸び悩んでいたときもありましたよね。
ですが、今シーズンはジャンプの失敗もあまりなく、
オリンピックにむけての調整は順調という感じです。

昔はあまり印象の残らないスケーターだったのですが、
なんだろ、今年は気になってしょうがない。
今年からむちゃくちゃ好きなスケーターになりました。
がんがれ! ライサ!


お次は、織田信成選手



織田君も今シーズン飛躍した選手ですよね。
ほんとうに今年はすごいと思う。
てか、モロゾフ組は今年大躍進ですよね。安藤選手もそうですが。
あとで詳しく書こうと思いますが。
やはりモロゾフの戦略はぴたりとあたっているようですね。
もともと荒川選手を金メダルに導いた戦略家。
やはり新採点システムに熟知したプログラム編成は見事としか言いようがない。

そして、織田君自身も何かが変わった気がします。
織田君ってこんなにステップ上手かったっけ?

なんていうのかな、今シーズンはすごく大きく見えるというか、
すごく自分を出すのが上手くなったと思う。
いままでは、どこかジャンプだけという印象しかなくて、
ほかの要素はあまり上手いという印象はなくて、
そういう点では、高橋選手に劣るなと思っていたのですが、
今シーズンは本当にのびのびと、からだの底から自分を出しているというか、
表現力が著しく上がった気がします。
やはり4回転ジャンプを捨てて、
別の要素の質を磨いた結果が見事に現れていると思います。


そして、最後に高橋選手。



SP1位だった割には、この三人の中でいちばんいい演技じゃなかった。
少なくともわたしが見た限りはそういう印象でした。
歴代2位という高得点だったにもかかわらずです。
別に自分がプルヲタだから、
高橋選手の演技はまだまだプルには及ばないとか
そういうわけではないですよ。
男子に限っていえば、今回のGPFの男子はインフレ気味の点数でしたから。
ライザだって89点出してたし。
そうではなくて、なんというのかな。
高橋選手らしさがまだ戻っていないというか、そういう気がするんですよね。

高橋選手って日本人にしてはめずらしく自分を出すのが上手いというか、
すごく雰囲気がセクシーで、ああいうアピールができるっていうのは
本当に貴重というか、高橋選手の持って生まれた才能だと思うんですよね。
あの雰囲気だけは、さすがの氷帝、プルシェンコでも出せないものだと思います。

そのいつもの雰囲気がですね、なんかいつもよりも硬いというか、
本調子じゃない感じがするんですよね。
以前の彼だったらもっと生き生きと滑っていたと思う。
特に全盛期だった2008年の四大陸選手権とか。
あれは彼のネ申演技でしたが、
あのときの高橋選手はもっとすごかったし、
歴代最高得点が出ても納得できるものでした。

ですが、この大会を見てまだ本調子ではないのだなということが分かります。
あれだけの大怪我から復帰したわけですから、
そんなに簡単に2008年ごろの調子に戻るわけはないのですが。
しかし、あれだけの実力の持ち主ですから、
もっと力を出せるはずと望んでしまうのはぜいたくなのでしょうかね。
ま、オリンピックまでにはきちんと調整してくると思いますが。


2009/11/22

プルシェンコ復活で変わる!? 4回転時代の再来か?



《前回からの続き》

最後に。
フリーの衣装、とてもいいですね。
いまの彼に似合っていると思います。
肌襦袢のところがタトゥーみたいになっていて、すごくセクシーというか。
それに比べ、SPは個人的にはあまり好きな衣装じゃないな。
FPと似たような感じだし。変えたほうがいいような・・・
でも、トリノのときもSPの衣装はあまりよくなかったし、
逆にそっちのほうがいいのかな。
トリノの再現ということで、金メダルを取りやすいかもwww


とにかく、これでプルシェンコの現役復帰は果たされました。
あとはどうバンクーバーまでつないでいくか。
本人としてもそれなりに満足の行く試合になったのでは?
確かに点数は4年前に比べたら低いですが、
この4年間まったく試合に出ずに、持ち点もない状態で
これだけのスコアを叩き出せたということはかなりすごいことだと思います。
逆に、ほかの選手たちに大きなプレッシャーを与えたことは間違いない。

誰もがこれほどまでに完璧に彼が復活するとは考えていなかったわけですから。

これは明らかにこれからの競技に大きな影響を与えるでしょう。

まずは、4回転持ちの選手は大いに勇気付けられたはず。
ここ数シーズン、4回転ジャンパーたちは不遇の時代を過ごしていました。
特にジュベールは受難そのものだったような・・・
なまじ4回転が飛べるだけに、
ほかのジャンプでは過酷なまでのエラーを取られたり、
回転不足を指摘されたりしてました。
まあ、それでもジュベールはあの通りの性格の人ですからw
(俺のフリップはルッ(ry )
少々のことではへこたれてはいないとは思いますが、
それでも、今年の世界選手権のミスといい、彼にとってはつらい時期だったでしょうね。

しかし、プルシェンコの復活によりジュベールもかなり奮起したはず。
NHK杯での彼の演技にはそれが顕著に現れていました。
実際には実現はしませんでしたが、FPで4回転を三回入れると宣言したのも、
プルシェンコのあの4-3を見てのことだったと思います。

やはりジュベールにとっての最大のライバルはプルシェンコなのでしょうね。
個人的にはどうかとは思いますがwww
ですが、まがりなりにも2004年の欧州選手権ではプルに勝利しているわけですからね。
その後も、プルシェンコに挑発的な発言をして、彼を煽っていたこともあるし。
プルシェンコあってこそのジュベールなのでしょう。

ジュベールのプルシェンコを倒したいという強い気持ちが
ここ数シーズン折れかけていた彼の心に火をつけたのではないでしょうか。





このSPは本当にすばらしいですよね。
4-3もすごくクリーンに決まって。3Aもヤグディン並みに豪快でいいし。


このプログラム、本当にいいプログラムですよね。彼に合ってる。
前シーズンからのプログラムですが。
ステップだってすごく躍れてるし、スピンもいいし。
個人的に、ジュベールはジャンプだけの選手という印象が強かったのですが、
こうしてプログラム全体を通してみると、ステップも上手いし、
ほかの要素でもかなりの努力をしているのだなということが分かります。
トリノからさまざまな部分でかなり成長してきていますよね。
ジュベールはわたしと同じ年なので、個人的にはがんばって欲しいです。


反対に、4回転を持たない選手には不利になったかと思います。
特にカナダのパトリック・チャン選手。
チャンはスケーティングが恐ろしいほど上手いが、いかんせん、ジャンプが苦手。
もちろん決まれば、すばらしく質の高いジャンプなので
加点がてんこ盛りにつきますが、なにぶん成功率が高くない。
調子が悪いと3-3ですらまともにとべなくなってしまう。
先日のスケカナでも、3-3ができなくて、3-2となってしまいました。
3-2って、女子か!



今シーズンに入ってからは、3Aがまともに飛べなくなってきているような・・・
単発でもようやく飛べている感じなのに、
コンボにしたら余計飛べなくなってしまうような・・・
てか、チャンって3A-3T、成功させたことありましたっけ?
それとも、もともと3A-3Tにしていないのかな?
でも、3A-2Tもまともに飛べていないような・・・。
少なくとも、昨シーズンで成功させたところを見たことがない ャバィ・・(-ω-;)

それでも、彼の点数が相対的にほかの選手よりも高めなのは、
プログラムの『つなぎ』の部分が優れているからです。
実は、去年のシーズンからつなぎの濃いプログラムを滑る選手には
PCSをほかの選手よりも高くつけるよう、ジャッジに要請されているそうです。

そういうわけで、ジャンプやほかの要素がグダグダでも、
チャンには高い点数が出るようになっているわけで。
PCS的にはチャンは五輪の金メダル候補といえそうですが、
ジャンプではプルシェンコにかなりの後れを取ってしまったことは確か。

前にも書きましたが、
チャンは加点が2点、または時には3点が付くほどの
『質の高い』3-3のジャンプを飛びます。
しかし、どれだけ質の高いジャンプを飛んでも、4-3の基礎点には勝てません。
ましてや、プルシェンコの4-3にはかなりの加点が付きます。
仮にチャンの3F-3Tに3点の加点が付くとしましょう。それで、合計12.5点。
しかし、プルシェンコの4T-3Tは、たとえ加点が1点だったとしても、14.8点になるのです。
その時点で2.3点の差が付いてしまいます。
ましてや、プルシェンコの場合、加点が1点だけということはないでしょうから、
さらなる差がついてしまうでしょう。
基礎点という時点でチャンはすでに負けているのです。

それに、質の高いジャンプやらTRというものは
素人にはひじょうに分かりにくい。というか、良さを判断しにくい。
オリンピックともなれば、コアなフィギュアファンだけではなく、
フィギュアのルールも知らない、普通の一般人の多くが観戦することとなる。
そのときに、ジャッジはどう判断するのか。
もし五輪で、チャンとプルシェンコの両方がネ申演技をしたとしましょう。
そのときに、チャンのほうが『つなぎ』がよかったからと
プルシェンコよりも点数が高くついてしまったら、果たして観客は納得するでしょうか。

プルシェンコのほうが明らかに難度の高いジャンプを飛んでいるのに、
チャンは、素人の判断できない『つなぎ』やら『質の高さ』やらが
プルシェンコよりも上だからと、点数が高くついてしまったら・・・。
カナダ人は満足するでしょうが、ほかの観客は首を傾げてしまうでしょう。

いまの採点システムの最大の問題点は、ここにあると思います。
素人が見て感じる選手たちの演技のできの良さと
ジャッジの判断する点数が乖離しすぎているのです。
こういうことが五輪本番で起きたら、
ソルトレークの再演となってしまいかねない。
いや、塩湖のときよりもよりいっそう深い怨恨を残してしまう。

カナダは自国の選手を勝たせたいあまり、
ルールを改変させるという暴挙に出ていますが、
実はこの方法は、巧妙でうまくいっているように見えて、
ひじょうに危うい点も多いのです。

まず、誰もが公平だと思わなくなってしまうという点。
八百長があるのではという疑いが激しくなってしまう点があります。
そうでしょう。観客がその選手の演技が上手いと思っても
点数には反映されないのですから。

そして、第二に技術が退化してしまう点。
難度の高いジャンプを飛んでも加点が付きにくければ、
みな無難なジャンプを飛んで、高い加点をもらおうとするでしょう。

また、スピンやステップのレベルが細かく決まっているため、
高いレベルを取るために、誰もが同じ要素を取り入れてしまう。
そのため、選手の個性がなくなり、みな同じような演技となってしまう。
その結果、面白みがなくなり、観客はいっそうフィギュアから離れてしまう。

最後には、フィギュアスケートという競技自体が衰退してしまうという最悪の結果をもたらし、
最終的には、カナダ自身が自分の首を絞めていたということに気づかされると。

カナダ人の悲願はよくわかります。
エルヴィス・ストイコ、カート・ブラウニングといった優れた選手を
数多く輩出してきたにもかかわらず、
オリンピックでは不幸にも不遇だったことを考えれば、
彼らが、自国で開催するオリンピックで、
ぜひとも金メダルを取りたいという気持ちは分からないわけでもありません。

しかし、何事にもやりすぎてはいけません。
それはかえって自らの首を絞めてしまうのです。
その証拠に、プルシェンコが復活してしまいました。
プルの復活はカナダが最も想定していなかった事態でしょう。
しかも、単純な復活ではありません。
金メダルを狙えるレベルでの復活なのです。

カナダもプルシェンコに対してはどうすることもできません。
小手先のルールを変えても、プルシェンコを貶めることはできないのですから。
回転不足も取ることができないし、エッジエラーも取れない。
ジャッジだとて、フィギュアスケートの歴史を変えてきたこの天才に、
いまさらいちゃもんをつけることなどできないはずです。
彼こそが男子のフィギュアスケートの歴史そのものなのですから。

天才というものは、いつでもルールや時代を超越してしまうものです。

カナダはプルシェンコにすっかり恐れをなしてしまっているようで、
チャンを使ってプルシェンコを非難するという暴挙に出ています。


やはり『つなぎ』のなさをいろいろといっていますよね。
ロステレコムでの挑発的なパフォーマンスにも怒っているようです。

しかし、それは逆にカナダ陣営の焦りを暴露してしまっているようにしか見えません。

チャンは優れた選手ですが、プルシェンコのライバルとしては役不足。
凡人はどうあがいても天才には勝てません。
天才に勝つためには、自らを犠牲にしなければならない。
ヤグディンはプルシェンコに勝ちましたが、
その代わり、自らの健康を失ってしまうという大きな代償を払いました。
あのヤグディンでさえもそうだったのですから、
カナダもプルシェンコに勝つためにはそれなりの代償を支払うべきです。
だから、チャンも、小手先の『つなぎ』の濃さなどではなく、
正々堂々と、
自分の身を賭して4回転を飛ぶんだぞという意気込みで闘わなければ。
しかし、その代償がフィギュアスケートという競技全体の衰退だとしたら、
わたしは一生カナダを許さないけど。

どんなに『つなぎ』が優れていても、
人間、見た目の派手さ・すごさには勝てないのです。
最後には難度の高さ、誰もがやったことのない技に
惜しみない賞賛を送るものです。

プルシェンコの復活が、
フィギュアスケートという競技を正常化してくれる
何らかの手立てになってくれることを願ってやみません。


2009/11/21

劇的復活!-氷帝の帰還- プルシェンコ ロステレコム杯 FP考察 



お待たせいたしました。

次はFPです。

佐野稔解説バージョンでお楽しみくださいwww




感想は・・・、ほぼSPと同じなんですが。

正直、SPを見たときまだそれほど彼の復帰を信じていなくて
(ごめん、ジェーニャ ホジホジ( ゚┌・・ ゚)スマン)
「まぐれ」ということもありうると思っていたのですが・・・

やっぱり宇宙人は宇宙人でしたwww
地球に戻ってきても宇宙人の役割をしっかりと果たしておりました。

やっぱ、この人・・・天才だよね。

理屈とか常識といったものをかるーく超えてしまうんだよね。
ひとりだけ別の次元にいるような・・・
「ような」ではなく、実際いますよね。
しかも、それが4年たったいまでも異次元にいるわけで・・・

わたしもそう思いましたもん。

このヒト、いったい何なの?  ガクブル((ノ)゚Д゚(ヽ))ガクブル って。

だってね、考えてみてくださいよ。
ほかの選手がどれだけ4Tを飛ぶことに苦労しているか。
いまの若手の選手なんて、ほとんど飛べていないじゃないですか。
もちろん、いまの採点システムではわざわざ4回転を飛ぶ必要はありませんが、
それでも、まともに4回転を飛べる選手はいない。

同じロステレコムに出場していた小塚選手を見れば分かるじゃないですか。
単発の4回転を入れるだけでもひじょうに苦労をしている。
織田選手だってそうですよね。
練習であれだけクリアーな4-3-3を跳べても、
実際の試合ではできないんですから。

でも、このエフゲニー・プルシェンコという怪物は
約4年という選手にとっては長すぎるブランクをものともせずに、
昔と同じように、それどころか、トリノの頃よりもさらに精度の高い4Tを飛んでいる。
26(試合当時)歳の、スケーターとしては盛りのすぎた、高齢の選手がですよ。

いかにプルシェンコという選手が傑出しているかがよく分かります。

もはや理屈ではないんでしょうね。
体に染み付いた感覚が彼に4回転を飛ばせているんでしょうね。
コーチのミーシンがプルシェンコ復帰の最大の障害が「体重だ」といっていましたが、
彼のいっていた意味が今ではよく分かります。
タイミングとかスキルとか、そういったものは問題ではないんです。
それだけ彼の4回転の技術は絶対なのでしょうね。

なんという恐るべき才能・・・

プルシェンコを見るにつけ、浅田選手との差を思い知らされます。
もちろん彼女も天才なのですが、天才の次元が違うというか。
彼女はまだまだ発展途上だなと。
なんども同じことを書いてしまいますが。
ですが、だからこそ、彼には『宇宙人』というあだ名が付いているわけで。

そのほかのジャンプもすべてよかったと思います。
3Aもすばらしいですよね
すごく高さがあって、幅もあり、軸の取り方もよい。
佐野稔さんも「うめぇ!」と褒めておりましたwww

フリップはちょっとアウト気味だったかな。
かなりフラットに戻してきてはいるとは思うけれども。
エラーは取られていませんが、加点は少なかったですよね。

やっぱりプルシェンコ級の選手になると、
多少エッジに問題があってもジャッジは無視するんでしょうかね。
パトリック・チャン選手は明らかにそうですよね。
ジャンプの見栄えがひじょうにいいので
多少のエッジエラーがあってもジャッジは不問にしてしまう。
でも、あのプルシェンコにeなんてつけたら、
ロシアスケ連は抗議するだろうし、またプルサイドも黙っていないでしょう。
プルシェンコ対しては、ジャッジは「不可侵」って感じがするな。
まあ、ルールを変えたただ一人の選手ですからね。
手紙ひとつ書いただけで、コンボのルールが2つから3つに変わったんですから。
プルシェンコにはいちゃもんをつけられないのでしょう。

プログラム全体の構成もそれほど悪くはないのでは?
選曲も悪くはないと思いますよ。
最初どうなることやらと思いましたが。
意外にまとまってるし、プルグラムなのはお約束としてww、
マートンはいい仕事をしたと思いますね。
何十回と書き直しをさせられた成果が出ているかとwww
SPよりもいいんじゃない?
むしろSPの曲はかなりの手直しを必要とするかと思います。
あの、豚切りな曲つなぎはどうかと・・・
選曲自体は問題ないと思うんですよ、
やはり『戦場のピアニスト』はヤバイですからね。
ポランスキー監督、捕まっちゃったし (´-∀-`;)

難度の高いジャンプを前半にまとめて飛ぶのはいまさらって感じだな。
トリノの時だってそうだったし。
後年のプルシェンコのプログラムは、体の負担を考えてすべてそうしてましたから。
特に問題はないかと。
いろいろと批判はあるかと思いますけれども、
4回転を飛ばないで無難にまとめるよりはずっとましなわけで。
むしろ27歳になったプルシェンコが4回転を2回入れようとしていることを評価したいですね。
腐ってもクワド厨なんです。

ステップだって二日前に急遽こしらえたものにしては、それなりにレベルは取れていたし、
スピンも、最後はスタミナが切れて回転が遅くはなっていましたが、
レベル取りには問題はなかったし、それほど悪くなかったかと。
シットも以前よりも浅くはいっていたし、
バリエーションもレベルを取れるよう構成されていたので、
このままでもいいのではないでしょうか。
個人的にはドーナツを見たいですけれどもね。

ただ、SPもそうでしたが、
つなぎの部分についてはもっと改善しなければなりませんよね。
TRがSP同様6点台ですからね。
チャンのプログラムに比べたら、かなりスカスカだしwww
ですが、これもきちんとバンクーバーまでに直してくるとは思いますけれども。

あとコンボも、3連続コンボがなかったので、そこをどうするのかが問題かな。
本人としては4-3-2を入れたいと思っているのでしょうが。
ただ4-3-2ってどうなんでしょうかね。
もちろん一ファンとしては4-3-2を見たいですが、
加点とかTESという点で果たしてメリットがあるのかどうか。
4-3をより正確に飛んで2点の加点をもらうほうがいいような。
きっと4-3-2を正確に飛んでも、
せいぜい1点ぐらいしか加点が付かないような気がするんですよ。
それならば、より正確な4-3を飛んで、
体調が許すのであれば、もうひとつ単発の4回転を
入れたほうが点数的にはお得なような。
いまのルールって簡単なジャンプをより正確に飛んだほうが有利ですからね。
でも、3-2-2はプル的にはプライドが許さないだろうな。
よほどのことがない限り、入れてこないと思いますね。
もし入れるとしたら、彼の怪我の具合がよくないときだけかと。
たぶん想定さえもしていないんじゃないかな。

あと、スタミナも気になります。
最後はほとんど流していただけだったので。
スピンの回転が遅くなっていたし。
まあ、これも直してくるとは思うんですがね。
本人も「7割の出来」といってますし、
スタミナ、コンボ等の問題点も把握していますから、
あとはできるだけ無理をせずに、試合をこなすことですよね。
しつこいようですが、
プルシェンコにとっていちばんの敵は「怪我」でしょうから。

《続きます》


2009/11/17

劇的復活!-氷帝の帰還- プルシェンコ ロステレコム杯 SP考察 



みなさま、大変お待たせいたしました。

プルシェンコのロステレコム杯を取り上げていきたいと思います。

前にも取り上げましたけれども、改めて動画をうpします。
まずはSPから

(追記:日本語バージョンを見つけました)



これほどまでに鮮烈で、かつ、劇的な復活劇はないでしょうね。
正直、ファンであるわたしですらプルの復帰を本気で信じてませんでしたもん。
あの数ヶ月前のメタボッ腹を見たらねぇ~。
それに、明らかに金目当て過ぎる恋人(=現奥さん)とか、
あのコラボした怪しい歌手とか・・・
もうスケートとかけ離れたところでしか話題にならないという。
スポーツ選手であることすら忘れたのかと、
すごく悲観的になっていましたが、
拙ブログでもこんなことでいいのかとさんざん書き立てましたし、

ですが、まるでそんなことなど嘘だったかのような復活劇。

現役バリバリ時代を髣髴させるような
きれい過ぎる回転の4T-3Tに3A。
なぜかルッツは2回転でしたがw
約4年ぶりの試合復帰を考えれば
プレッシャーが多少なりともあってもしかたがないと思うので、
最初の2つの難度の高いジャンプをこなして気が抜けたのでしょうね。
ま、ご愛嬌ということで。
そういうところも天才らしいというか・・・・
なぜ、ここで!? ∑(*゚ェ゚*) というところでねぇ。
さすがはプルシェンコwww

ただプログラム全体の出来としてはまだまだという感じはします。
今回は、あくまでも試合でジャンプが
きちんとできるかどうかという点に焦点を絞ったという感じ。
スピンも以前のものに比べたらかなり良くなってはいるものの、
レベルが取れていないところもあるので、まだまだ改善しなければならないでしょうし、
ステップもちょっと雑でした。
そして、何よりもプログラム全体がまだ未完成というか、
つなぎがほとんどなく、ただ流しているようなプログラム。
TRが6点台だったことを考えると、
もっとプログラムを手直ししなければなりません。

もちろんプルシェンコ陣営はきちんとそのことを考えていると思います。
事実、トリノ五輪のときは試合のたびに振り付けを変えて、
点数が取れるように試行錯誤していましたから、
これからの試合を見ながら、プログラムを改善してくるでしょう。

また、約4年のブランクがありながらも、
82点台を取れるのは立派。
ルッツの失敗がなければ88点は取れていたと思うし、
またPCSも上がっていたと思うのです。
そういうことを考えれば、この点数は妥当。
格段低いとは思いません。

それに、ロシアはプルシェンコの地元です。
やはり地元のスターに対しては、ある程度の「上げ」が存在するのも事実。
プルシェンコの点数自体はそれほど高くはありませんでしたが、
逆に、ほかの選手の点数を抑えることで
プルシェンコの点数を相対的に高くしたという印象は否めません。
プログラム全体の出来としては
2位の小塚選手のほうがまとまっていました。

それでも約4年のブランクを考えれば、
ここまでジャンプを完成させてくるのは立派かと。
宇宙人の本領発揮というところですね。
浅田選手にもこういう「強さ」がなければなりません。
他を圧倒するような、有無を言わせぬ強さを持たなければ。

これでプルシェンコに対してジャッジは何もいえなくなりました。
少なくともジャンプに関しては。
これほど完璧なジャンプを飛ばれてしまっては、DGのしようもありません。
プルシェンコの強みはなんといっても、回転不足とは無縁なジャンプの確かさにあります。
彼の場合、むしろ回転不足のまま降りてしまえば転倒してしまう。
それぐらい「完璧な」ジャンプなのです。
疑惑の採点・加点など起こりようもありません。
事実4T-3Tの加点は1.2点と
近年の4回転ジャンパーでもなかなか出せないような加点をたたき出しています。
採点競技は試合の積み重ねによる実績がものを言いますから、
プルシェンコの今回の試合でたたき出した点数は
バンクーバーに向けて確かな布石となることは間違いないでしょう。

そして、また他の選手にも計り知れないプレッシャーを与えたと思います。
特に4回転を飛ばない選手に対してはかつてないほどの重圧なのでは?
3-3のコンビネーションをどんなに完璧に飛ぼうとも、
4-3の基礎点が違う上に、1点以上の加点が付くことを考えると、
それだけで3点近くの差が出てしまいます。
技術点でプルシェンコに差をつけるのは難しくなってしまいます。

それにプルシェンコが他の選手よりも有利なのは、
ジャンプに問題がない分、
ほかの要素やプログラムの手直しをすれば
まだまだ点数が上がる余地があるということです。

3-3しか飛べない選手がいまから4回転を跳ぶのは無理です。
しかし、もともと4回転もちの選手が、ジャンプを取り戻しさえすれば
あとはほかの細かい要素を改善させていくだけなので、
ほかの選手に比べたら圧倒的にラクだし、
心理的負担も軽いかと思います。

ただプルシェンコは深刻な怪我を抱えていますし、
事実、満身創痍なわけですから、
バンクーバーまではできるだけ無理をせずに、
怪我のないまま試合に臨んでいって欲しいです。

たぶんプルシェンコにとっての最大の敵は「怪我」でしょうね。

もしかしたら五輪二連覇もありうるかもと思っております
(ファンの贔屓目かなwww)



2009/11/16

2009 スケート・アメリカ キム・ヨナ SP FP 考察



みなさま、本当にお久しぶりです。

m(o´・ω・`o)mペコリン

10月23日以来まったく更新されず・・・

大変申し訳ありません ゴメンナサ──・゚・(。>д<。)・゚・──イ

実は先月末から自動車教習に行っておりまして、
免許取得中でございます。
今月末に卒検があるので、それまでは頻繁に更新するのは難しいかと・・・

もしかしたら来月もかかってしまうかも・・・
ぜんぜん運転がへたくそで、
仮免取得のときも補修いっぱい受けさせられて、
それでもぜんぜんできなくて、
「何回練習しても仮免通らないかも」と教官に言われてしまう始末・・・(´-∀-`;)
まあ、それでも努力のかいあって一発で通りましたが、
路上に出てもへたくそ運転は相変わらずで・・・
方向転換がどうしてもできずに、
我慢の限界に達した教官は横で寝てしまいました・・・・(´Д⊂ ダメポ
ちゃんと卒検までいくのか不安です。

ですが、可能な限りはがんばって更新したいと思います。
今日は少しがんばってプルシェンコのロシア杯での考察や
浅田選手の今後などを書いていきたいと思います。


が、その前にキム・ヨナ選手のスケアメについての考察を少し。

まずはショートプログラムから。




ゥ──σ(・´ω・`;)──ン

調子が悪かったのでしょうか?
エリボン杯よりもずっと生彩を欠いている感じ。
全体的に覇気のない演技でした。

得点はアレなので、ここではいちいち書きませんが、
(いろいろいっても無駄なので)
ですが、調子があまりよくないことは確かです。

ジャンプの回転不足は相変わらずですが、
キム選手に関しては多少の回転不足でも
とにかく着氷すれば加点を与えるという
彼女だけ特別な採点システムがあるようなので、
なんともいえませんが、

ただ彼女のジャンプが去年よりも激しく劣化してきていることは明らかで、
特にセカンド3Tの着氷が目に余るほどひどい。
着氷時にしぶきが上がるのは明らかに回転不足の証拠。
あれを浅田選手や安藤選手がやったら確実に<が刺さりますよ。

でも、キム選手に対しては見て見ぬ振りを決め込んでいるんですから
しょうがないですよね ( ̄ヘ ̄)ウーン

氏ねよ、ジャッジ  凸(`Д´メ)FUCK YOU!!



まあ、それは脇に置いといて、
わたしが気になったのはショートよりも、FPのほうでした。



キム選手、あきらかにフリップの矯正ができていませんね。

ショートのときはアウトまではいきませんが、
かなりフラットな状態で飛んでました。
それでも認定されているのは、
カナダや韓国のスケ連の豊富な人脈(もとい金脈?)と
強いパイプラインのおかげでしょう。

これはわたしの個人的な推測ですが、
事前にエッジの状態をジャッジに見てもらっているのではないかと思うのです。
どの程度のエッジの傾き具合ならば認定されるのかということを
ジャッジに見てもらって、インまではいかないけれども
この程度のフラットならば認定しようと事前に合意ができているのはないかと。
なので、キム選手も比較的安心してフラットのままで飛ぶことができる。

わたし個人は彼女のエッジは完全にアウトだと思っていなくて
(といっても、足元のスロー再生がないのでなんともいえませんが)
カナーリ怪しいけれどもフラットな状態に戻してきているのではないかと。

しかし、やはり実力に見合わない高得点はどこかで不平・批判が出るものです。
それをキム選手がまったく知らないわけではないと思います。
それに、自分だけがジャッジから特別視されていることは
選手たちもうすうす気づいているでしょうから、
当然自分への風当たりは強くなるし、
また(日本以外の)海外のマスメディアの不評を買うばかりで、
それはそれでプレッシャーとなります。

キム選手だとて馬鹿ではありません。
それなりの努力は必要だと思っているはずです。
実際、彼女のフリーでのフリップはインに近い形で飛んでいました、
というよりも、飛ぼうとしていたといったほうが正しいかな。
ですが、失敗していましました。
ここに彼女の問題点がはっきりと露呈されていると思います。

やはりエッジは矯正されておらず、
正しいエッジで飛ぼうとすれば、ジャンプに狂いが生じ転倒するということです。
そして、フリップの失敗がルッツも狂わせたということです。

もちろん最初のコンビネーションが失敗した精神的ショックも大きいでしょう。
しかし、それだけではないような気がします。
ルッツは明らかにタイミングが合わず、回転不足のまま降りていましたし、
その回転不足のまま降りてきたことが、セカンドの3Tのジャンプを飛べなくさせました。
彼女の回転不足は、調子が悪ければかなり深刻な形で出るということでしょう。

ただ、FPでもかなりジャッジの救済は入ってました。
2A-3Tのセカンド3Tはいまだかつてないほどの
ごまかしのきかないほどのあからさまな回転不足でした。
これに<を取らないのは・・・、ねぇ・・・ε-(‐ω‐;)

2A-2T-2Loの2Aも明らかに回転不足でした。
グリって着氷してから回ってるじゃん。
ちょっと、ジャッジ、もっとしっかりしてよー ( ̄´д` ̄)

とにかく調子が悪かったことは確かで、
それが、朝日新聞がいうところの、単に勝たなければいけないという
精神的プレッシャーだけだったとは思いません。

エリボン杯のときからも気になっていましたが、
(というか、韓国で開かれたアイスショーですでに思っていたことですが)
キム選手は全体的に技術的レベルが
ごまかしようがないほど劣化しているのです。

キム選手はセカンドの3Tをつけるのは
女子にしてはめずらしく得意な選手で
おそらく3-3のコンビネーションジャンプを飛ばせたら、
女子では世界一だと思います。
(もちろんセカンドに3Loをつけられる浅田・安藤両選手を別にして)
しかし、その3-3も2006年のときのほうが
もっと軽やかに、そして、より回転不足がなく飛べていました。
今は、確かに助走のスピードは相変わらず速いですが、
ジャンプがずどーんという感じでどこか重いです。
グリ降りが多くなってきている印象は否めません。

このごまかしがどこまで続くのか。
(そして、ジャッジの救済がどこまで続くか。)


フラット選手の成長もすごく気になります。
今季はひじょうに調子がいいのではないでしょうか。
個人的には、あまり印象のない選手でしたが、
昨日の試合はSP/FPともにすばらしい出来でした。
SPの3-3の失敗がなければ優勝していたかもしれません。
(絶対にありえないだろうけど (;^ω^A )

個人的にはサーシャ・コーエン選手が出場が気になっていました。
もし彼女が出場して、それなりの演技をしていたら
もっとキム選手に違った点数が出ていたかもしれないからです。

ただキム選手本人以上にジャッジは斜め上ですから・・・
GPFしだいですよね。
ジャッジはどこまでキム選手に点数を出すか。

サムスンの訴訟問題も微妙に影響していると思いますし・・・

あと、浅田選手の調子も大きく左右すると思いますよ。
彼女が調子を取り戻してくれば、また違った展開になるかと思います。


(次はロシア杯のプルシェンコ考察です)


2009/10/23

スゴすぐる…ガクブル((ノ)゚Д゚(ヽ))ガクブル 



とりあえず貼っておきます。

Evgeni Plushenko SP CoR 2009


あまりにもスゴすぐる・・・

ウソ━━━Σ(-`Д´-;)━━━ン!!

恐ろしいほど美しい4T-3Tに3A・・・
ルッツは失敗しちゃったけれども、
3年間の長いブランク明けの復帰試合としては上出来ではないでしょうか。
技術点がひとりだけ40点台って・・・
これでルッツが決まっていたらどんだけ~
小塚君も10点以上差がつかなかっただけラッキーと思わないと。

でも、思ったよりも演技・構成点が伸びていないのがちょっと懸念材料かな~
やっぱりつなぎとかその他の面で厳しいのかな。
しかし、これも来年までには調整してくるから問題なしかと。

また土曜日の夜あたりにでも詳しく考察いたしまする~
とりあえずうpしておきました

m(o´・ω・`o)mペコリン

2009/10/22

2009-2010シーズン到来 エリボン杯 女子FP 考察 その2




《前回からの続き》


では、次は浅田選手にまいりましょう。




なんど見てもすごいプログラムですよね。
なにもかもが荘厳で、荘重で。
見ている者を何かこう厳粛な気持ちにさせるというか。
ラフマニノフはもともとドラマティックな曲を作ることに長けた人ですが、
それにしても、ドラマティックすぎますよね。
なんといえばいいのかな、神の領域に触れたようなというか、
そういう神聖さを感じる。
そして、何よりもすごいのは、浅田選手がその音楽に負けず、
しっかり演じきっているということ。
19歳の、まだ大人にもなっていない女の子がですよ、
こういう魂の根源に触れたような表現をしているのが本当にすごくて・・・。

キム選手とは別の意味で言葉にならないというか・・・

わたしはこのプログラムが大好きなので、
変えるべきではないと思っていますが、
なかにはもっと浅田選手に似合う
華やかな曲にすべきだという人もいるようで・・・
特にカナダの人はそう思っているようですね。

でも、わたしは変えるべきではないと思う。
このプログラムは完成させたら、まさしくネ申プロになりますよ。
それに、もしオリンピックでネ申演技をしたらまさに「伝説」になると思う。
ソルトレークのヤグディンの「仮面の男」のように。
まさにタラソワ渾身のプログラムだと思います。
それほどまでにタラソワは浅田選手に全てを賭けている。

浅田選手のイメージにそぐわないというのであれば、
観客や解説者たちに文句を言わせないようにすればいいんですよ。
浅田真央は「春のお姫様」だけの選手だけではないと。
そうやって自分の実力でイメージを覆していけばいい。
そして、そうやって一辺倒のイメージでしか見れない人に
自分のほうが間違っていたといわせるようにすればいいだけです。

浅田選手はそういう実力をそなえているし、
現に少しずつではありますが、
プログラムを完成させてきているではないですか。

ステップもJOのときよりもずっと上手くなっていたし、
スピン・スパイラルも改善が見られました。
プログラム全体に流れができて、スムーズになったと感じます。

最初の3A-2Tのコンビネーションは完璧でした。
3Aの精度はすばらしいですね。
2Tをつけても危なげなく降りられるようになっている。
あとは確率を高めるだけ。試合では必ず成功させなければ。
これは今後の大きな課題だと思います。

以前も書きましたが、浅田選手の構成は少しいびつです。
アクセルに頼りすぎている。
個人的にはルッツや3F-3Tを入れてバランスを取るべきだと思いますが、
浅田選手がアクセルで行きたいと望んだそうですから、
アクセル主体の構成で行くならば、絶対に成功させなければならない。
実はここが浅田選手の現時点での弱点かと思います。
決まればすごいけれども、その分失敗も多い。
やはりプルシェンコのような絶対的な確率で跳ばなければ。

それと体力。
最後の2Aでの失敗は去年のGPFの3F失敗と重なりました。
3A2回は、今季の浅田選手を以ってしても
とてつもない体力がいるということです。
しかも、そのあとには45秒の怒涛のステップが待っている。
その体力の配分をどうするのか。
これも大きな問題です。

ジャンプの失敗は・・・、
ループに関してはかわいそうで見ていられませんでした。
単独のループはどう考えても回転不足には見えない。
あれで回転不足を取ったら、
キム選手のジャンプはもっと回転不足をとらなければならない。
ようするに今季採用されることとなった「見た目のいいジャンプへの積極評価」は
キム選手にしか適用されないということになる。
ループの厳格化は去年よりもひどくなった気がするのはわたしだけでしょうか。

これは無言の圧力ですよね、構成をキムヨナにしろという。
つまり、ルッツをいれ3F-3Tを投入しろといっているんだと思います。

ただ3F-2Lo-2Loに関しては若干の回転不足が見られました。
3Fの跳び方を変えたのでその影響かと思われます。
いっそのこと3F-2T-2Loにしたほうがいいのかもしれません。
浅田選手はセカンドジャンプにTをつけるのが苦手ですが、
アクセルにはつけれるので、2Tなら大丈夫ではないかと。

個人的にはFP・SPの両方とも構成を変えたほうがいいとは思っています。
3AはFP一回にすべきです。
浅田選手の今後の成功率にもかかってますが。
しかし、彼女へのダウングレードが(キム選手よりも)苛烈なのは、
やはり3Aを跳ぶからだと思います。
男子もそうですよね、
4回転を跳ぶ男子に対してのダウングレードが厳しいことを。
チャンのエッジエラーは見逃されても、
ジュベールのエッジエラーは見逃しません。
これは明らかに難度の高いジャンプを飛ぶ選手に対しては
厳格にジャッジするということを示唆している。
女子の浅田選手も例外ではないわけです。

ただ難度を下げたところで
キムヨナよりも高い点数が取れるのか、
という疑問がありますが

もしかしたら浅田選手はもはやバンクーバーでの
金メダルを捨てているのかもしれない。
誰かにすでに言われているのではないでしょうか。
バンクーバーでは金メダルはキムヨナに取らせるつもりでいると。
けっこうこういう話はあるようですよね。
前にも書きましたけれども。
カート・ブラウニングは選手時代、
次の世界選手権ではジャッジはペトレンコを優勝させるつもりでいるから、
負ける準備をしておきなさいといわれたことがあるそうですから。

浅田選手だってそういう話を聞かされていないとは限らない。
バンクーバーで金メダルを取れないというのであれば、
少なくとも『記録』という面では、
誰もが達成できないことをしたいと思っても不思議はないはず。
まあ、これはわたしの単なる想像ですが ( ^ω^;)

とにかく浅田選手がアクセル主体の構成で行くならば
かなりのリスクは覚悟しなければならないのは確かです。
プログラムの完成度は増してきているとはいえ、
ループなど前季では想像もつかなかった問題が発生しているのですから。

考えてみれば、安藤選手も4Sにこだわるあまり、
昨シーズンの前半は上手くいきませんでした。
しかし、4Sをあきらめて構成を下げた結果世界選手権で見事復活しました。

今のルールは全てがおかしなことばかりで、
構成を下げれば点数が高くなるという不可思議な採点システムです。

今後のロシア杯以降の点数の出方しだいでは
真剣にジャンプの構成を考え直さなければならないかもしれません。
浅田選手が本気でこの採点システムで
金メダルを取りたいと思っているのであれば、ですが。

2009/10/21

2009-2010シーズン到来 エリボン杯 女子FP 考察 その1



スイマセン m(o´・ω・`o)mペコリン
更新遅れてしまいました。

かなり日にちがたってしまいましたが、FPの感想・考察を・・・。

といっても、あまりにもばかばかしくて考察する気になれないのですが・・・

ま、とりあえず、キムヨナ選手から見ていきますか。

プログラム全体の感想はSPと一緒です。
まったく感動しないプログラム。
やってることは去年と一緒。
変わり映えのしないプログラムを音楽だけかえてやっている。
だが、要素はそれなりに満たしているのであの高得点。。。
プルシェンコだってあんな点数、出せないでしょうに。

点数のことはどうでもいいです。
もう勝手にやってくださいという感じです。
ですが、ジャッジとしてはもう引っ込みがつかないのでしょう。
もしキム選手の点数を下げれば、
ジャッジは自分の誤りを認めることになる。
彼らとしては絶対にそれだけはしたくないでしょう。
収拾がつかなくなりつつあるのを分かっているのに、
いまさら引っ込みがつかず、このまま突っ走ろうとしている。
それが思わぬ墓穴を掘ることにならなければいいのですが。

しかし、そもそもなぜこういう風にキム選手だけ点数が爆上げされるのか。
それは浅田選手の『進化』と深く関係があるのだと考えます。

つまり、浅田選手は昨シーズンから
3A2回投入という女子としては最も基礎点の高い構成にしました。
かたや、キム選手はこれ以上基礎点を上げれません。
もし浅田選手がすべてのジャンプを決めてしまえば
浅田選手の圧勝ということになり、
「キムヨナVS浅田真央」の構図は崩れてしまいます。
これはISU的にはまったく美味しくない。
ISUとしては韓国からもっとお金を引き出したいし、
日本からもお金が欲しいはず。
そのためには、興行としての「キムヨナVS浅田真央」が必要です。
だから、キム選手の点数を上げざるを得ない。
そうしなければ、基礎点の上で絶対的に負けてしまう
キム選手には圧倒的に不利です。
したがって、キム選手は『演技・構成点』または『GOE』で爆上げされることとなった。
特にGPF以降。浅田選手が3A2回を初めて成功させた以降と重なります。
4CC以降キム選手の点数は高止まりを知らずどんどん高くなっていきましたね。

そして、この爆上げは今シーズンでも続くということです。
浅田選手がプログラムを完璧に滑れば、
200点以上は確実に出るわけですからね。
(点数の操作をしなくてもという意味です)
そうなってしまったら、韓国側としては面白くないし、
ISUとしてもお金をたくさん払ってくれる韓国に対して
顔向けできないでしょうから。

ですが、キムヨナ選手の実力・技術を純粋に見た場合、
明らかに劣化してきていると思います。
びっくりしたのは2A-3Tのセカンドジャンプ。
肉眼で見てもはっきりと分かるグリ降り・・・。
あれはひどすぎる。
確かにイーグルからのコンビネーションなので
難度が高いことは認めますが、いくらなんでも、あれは・・・
また、最初の3Lz-3Tもセカンドジャンプもひどい回転不足でした。
ルッツだとフリップとは違って回転不足になりやすいんですよね、彼女の場合。
サルコウも微妙だったな・・・。
あれで認められるのなら、
浅田選手のループは認められてもいいんじゃないだろうか。

しかし、彼女のセカンドジャンプはなぜかいちども回転不足を取られない。
今季から採用されることになった「回転不足でも見た目のいいジャンプは評価する」
というのを、ISUは彼女にだけ採用することに決めたようです。

これも浅田対策でしょうね。
浅田選手は前季以上に3Aの精度を上げています。
3Aのコンビネーションジャンプは明らかに前季よりも精度が高いです。
決まれば回転不足なく飛べるということがエリボン杯で分かりました。
あとは成功率を高めるだけ。
彼女の弱点は3Aは決まれば美しいが、成功率は高くないこと。
もっと成功率を上げなければなりません。

ただ、どうなのでしょうね。
こういうキム選手への 爆上げをして
収拾がつかない状態になっているとは思うんですが、
オリンピックでもこの体制を維持していくつもりなのか。
別にバンクーバーはキム選手が金メダルでもかまいませんが、
でも、これではいくらなんでも日本人は面白くないでしょう。
ISUだとて日本人の機嫌は損ねたくないでしょう。
少なくともかなりの額のお金を落としてくれる国なのですから。
キム上げを維持し続ければ、日本人のファンは離れてしまいます。
彼らもその辺はそれなりに懸念してるとは思うんですけれどもね。
どうなることやら ε-(‐ω‐;)ハァ・・

そして、今週末からはじまるロステレコム杯での
プルシェンコの点数の出方にも注目ですよね。
彼の演技・構成点がどこまで出るのか。
これでキム選手以下の点数ならば
ISUはどのようにいいわけするつもりなのか。

最後に。
キム選手自身の懸念材料を。
キム選手はFPではもうフリップを飛べないかもしれないと思いました。
エッジの問題は、実は彼女も解決しきれていないのではないかと。
キム選手は何かがあって滑れなかったといっていますがそうではない。
単純に自信がなかったんだと思います。
キム選手だって馬鹿ではありません。
自分の回転不足、エッジの問題をそれなりに認識しているでしょう。
フリップに関してはエッジにかなりの不安を持っている。
飛べなかったらどうしよう。
だからできなかった。

SPでは見逃してもらえたけれども
FPでも見逃してくれるとは限りませんからね。
最初の試合は本人もかなり意識して跳びますから、
それなりにエッジは矯正されるでしょうが、
試合をこなしていくうちに
自然と自分の『くせ』がもどってしまうこともある。

ジャッジに大いに見逃してもらっているが、
キム選手にも大きな弱点があるということです。
そこがオリンピックという大舞台にどう響くか。
メンタルが強いといわれていますが、
キム選手は実はかなり打たれ弱い。
以前エッジエラーがついたとき、
次の試合では飛べなくなっていました。
あの時はかなり動揺したんだと思います。

《続く》

2009/10/18

2009-2010シーズン到来 エリボン杯 女子SP 考察 その2



《前回からの続き》

もしかしていまの浅田選手に最も必要なのは、「挫折」なのかもしれません。
キムヨナ選手はひそかにこの大きな「挫折」を経験してますよね。
なにかというと、3Aを試みたものの結局跳べなかったという挫折です。
韓国で浅田選手と比較されて、
自分も飛べると信じていた3Aが結局だめだったのですから。
オーサーのもとについたのも、最初の目的は3Aを跳べるようになるためだったはず。
しかし、その挫折が彼女を強くしたとも言える。

荒川静香さんだって、世界選手権を優勝して次の年落ちに落ちまくって、
オリンピックシーズンでも浮上できなくて、
最後の最後で起死回生!って感じで優勝したわけですから、
ひょっとしたら、浅田選手ももっと「苦しみ」が必要なのかもしれませんよね。

でも、冷静に考えてみても、
あの「天才」といわれたプルシェンコでも、
最初のオリンピックでは金メダルが取れなかったのですから。
しかし、逆にそのことが大きな挫折となって
プルシェンコは絶対的な強さを持つ史上最高の選手になったわけですから。
もしかしたら、浅田選手の本当の強さは
バンクーバー以降に発揮されるのかもしれない。

ものすごい勢いで進化し続けている浅田選手ですが、
やはりまだ彼女は「未完成の」天才なんですよね。
そこがプルシェンコと大きく違う。
プルシェンコはすでに自分が何者か知っている天才でした。
完全無欠だったわけです。
したがって、新採点システムに変わっても彼をつぶすことはできなかった。
彼の技術が突出していたため、回転不足を取ることができなかった。
しかし、浅田選手の場合、女子ゆえの弱点がいくつかあったわけです。
そこをルール改正で大きく付かれてしまった。

もっと前にエッジを矯正していれば・・・と思います。
いまさらテクニカルなコーチを呼んで、1~2年という短い期間で
エッジを矯正しようとしても無理だと思います。
山田コーチについていたときに矯正すべき問題だったと思います。
これは日本のスケ連に大きな問題がある。
こういうルール改正の動きを読めず、
また、強豪選手となった日本選手をつぶそうとする
動きを読むことができず、彼女たちを守ろうとさえしなかった。

タラソワ以外のコーチについても同じだったと思いますよ。
今、盛んにタラソワはもうだめだとか言ってますが。
現にこちらに来られる方の中には、
「タラソワはもうだめ」というワードで検索していらっしゃる方もいます。
では、カナダ人のコーチにつけば
キムヨナ以上の点数がついて勝つことができたのか。
それは大いなる疑問です。


まあ、いろんなことをいっていますが、
まだシーズンは始まったばかり。
これからいろいろと調整もあるだろうし、
長い目で、穏やかな気持ちで見守っていきたいと思ってます。


で、次はキムヨナ選手ですが・・・




「・・・」
正直、何も感じませんでした。
こんなに感動しなかったプログラムはありません。
何の感慨もない。
確かにジャンプは正確で、完璧だし、
エッジの矯正もできている。
スピン、スパイラルのレベル取りもOK  
ステップも要素は満たしている。
でも、ただそれだけ。
去年とまったくかわり映えしない振り付けがそこに存在している。
シェヘラとまったく同じじゃんステップ。
こんなに人を馬鹿にしたプログラムってあるでしょうか。
わたしは見ていて怒りがこみ上げてきました。
音楽だけが違って、中身は全部以前と一緒。
それで76点が出るという。
これが現在の新採点システムなのでしょう。

しかし、もしこれが未来のフィギュアのあるべき姿であるというのなら、
わたしは一生フィギュアスケートを見ないし、ファンにもならない。
これはもはやフィギュアスケートではないとさえ思う。

キムヨナ選手の演技は完璧です。でも、感動はできない。
しかし、同じ「完璧」をもったプルシェンコはなぜ感動できるのか。
そこには人間を超越した技を機械のように正確無比に
繰り出す天才のあるべき姿を垣間見ることができるからです。
彼は決してSPに3-3を入れるような愚を犯さなかった。
いつでもどんなときでも、怪我をしているときでさえ、
そして、いま満身創痍で復帰をしようとしているときでさえ
男子最高の4-3を入れようとしている。
そして、それを誰よりも完璧にこなす。

しかし、誰もができるであろう技を完璧にやってみたところで、
果たしてそれは「美しい」と感じるのか。
体操の冨田洋之がそうだったじゃないか、
どうして「完璧」を追及するキムヨナが批判されて、
冨田洋之が批判されないのかという方がいますが。
冨田氏は決して「難度」を軽視してはおりませんでした。
高い難度を維持しつつも、その技を究極にまで高めるということをしていたのです。
だからこそ、日本人は彼を高く支持したわけです。

かたや、キムヨナはだれもができるであろう2Aを「完璧」に跳ぶわけです。
ジュニアの子ができる技を。「完璧」な2Aだとかいって。尊敬などできません。

キムヨナ選手を見ていると、
『ガラスの仮面』という漫画の姫川亜弓の「ヘレン・ケラーの演技」を思い出します。
完璧な演技なのだけれども、あまりにも型にはまりすぎて、何の面白みもないという。
結局姫川亜弓の演技は高く評価されたものの、賞を受賞するまでにはいたらず
北島マヤが受賞することになるのですが。
わたしはそういう印象をキムヨナ選手に抱きます。
確かに韓国のメディアが評するように「教科書」のようなのでしょう。
しかし、そこには個性も、面白みも、進化も何もないわけです。
もっと言えばキムヨナの演技に
浅田選手のようなプログラムを完成させようとする情熱がまるで感じられないのです。
与えられたことをただ「教科書どおりに」こなせばいいと思っているだけ。

その演技をすれば確かにいまの採点システムでは認められるのでしょう。
キムヨナ選手は明らかにいまの採点システムが作り上げた最強の選手です。

浅田選手というのはISUにとって
おそらく昔の伊藤みどりさんのような存在なのでしょう。
そして、その亡霊がふたたび日本に登場したことを心から恐れている。
浅田選手も伊藤みどりさんも、
彼らにとっては「異端」であり、排除すべき存在なのです。
技術ひとつ取ってみても、その体力や、表現力を見たって
浅田真央のような選手は現れたことがなかったのですから。
もし彼女がアメリカ人やヨーロッパ人だったら歓迎されたでしょうが、
くしくも伊藤さんと同じ国の人間だったことがいまの浅田選手を苦しめている。
そして、キムヨナは逆に浅田選手の当て馬的存在として、
ISUからの強い支持を受けることとなり、一気に脚光を浴びた。


新採点システム推進派ISU=キムヨナVS浅田真央=旧採点システム復活派

という対立軸がはっきりと見えます。

でも、本当の天才というものは常に叩かれるものですし、
むしろそういうバッシングにあっても、それを乗り越えていかなければならない。
前にも書きましたが、
浅田選手がこのシステムと真っ向から対峙していきたいのならば、
「真の強さ」を身に着けなければ。
つまり、プルシェンコのように
3Aやセカンド3Tのコンビネーションを有無を言わさず完璧に跳べる技術と
他人と圧倒するような表現力を身につけること。
やはりジャッジに付け入る隙を与えないような選手にならなければ。

もしいまのプログラムを浅田選手が維持していくのであれば。

浅田選手の戦いというのは、
オリンピックで金メダルを取るという戦いではなく、
システムとの戦いという最も困難な側面を多分に含んでいる。
もし彼女が新採点システム的なプログラムを
あくまで拒否したいのであればですが。

この戦いに勝てば浅田選手は、ある意味、
プルシェンコのように誰も手をつけられないような絶対的な存在となり得、
しかし、負けてしまったときは、もはやキムヨナだけではなく、
二番手・三番手の選手の足元にも及ばなくなるような
選手になってしまう可能性すらある。
(つまり、完膚なきまでにISUにつぶされてしまう)

わたしたちが考えている以上に、
浅田選手は難しい選択をしたのだと思います。

わたしたちファンは黙って見守っていくしかないとは思いますが。

2009/10/17

2009-2010シーズン到来 エリボン杯 女子SP 考察 その1



いよいよはじまりましたね、GPS。
といっても、まだ全部見ていないんですが。
特に男子。なんか波乱の幕開けだったようで・・・
でも、今シーズンはオリンピックという大舞台が控えていますからね。
昨シーズン以上に調整試合的な意味合いが強いはず。
たとえジュベールが不調でもそれほど気にすることのほどでもないのでは?
と思っております。
といっても、まだジュベールのSPを見ていないんでなんともいえないんですが。

パトリック・チャンがロステレコムを辞退したそうですが、
彼も当にGPSは捨ててますよね。
完全に照準をオリンピックに合わせています。
わたしもそれでいいと思います。
GPSのような金目的の試合の結果に
いちいち反応しているようでは身が持たないですよ。
いかにオリンピックで最高の演技をするのか。
それがいちばんの見所だと思っています。


で、早速女子のショートの感想を。
といいたいところですが、まだ全員のを見ていない・・・orz
なるべく今日中に見ようと思いますが、
いちおう主要選手、というか皆さんが最も関心のある
浅田選手、キムヨナ両選手の感想を。

まずは浅田選手のSPから。




浅田選手にしてはそこそこいい出足だったのではないでしょうか。
確かに最初のアクセルは失敗しましたが、
セカンドジャンプをいちおうつけて飛べていたし、
ほかのジャンプは失敗がなかったのですから、こんなものかと。
去年のエリボン杯に比べたらぜんぜんましでしょう。
むしろ、わたしは浅田選手の欠点よりも彼女の進化のほうに目を見張りました。

まず、ステップ。
去年のFPではいっぱいいっぱいで、
とちゅうで体力が持たずにへろへろになっていたステップが
今シーズンでは格段に改善されているところ。
とても体が動くようになって、すごくキレがいい。
生き生きとして、躍動感にあふれている。
2005年以来ではないでしょうか、
浅田選手があんなに生き生きとステップを踏んでいたのは。
浅田選手の体の調子はとてもいいと思います。
昨シーズン以上のキレのよさ、充実を感じる。

それに、スピード。
去年以上にスピードがよく出ていて、
停滞した部分が少なかったのもよかった点でした。
去年の課題がきちんと改善されていて、
改めて、浅田選手の努力には敬服しました。

ジャンプに関しては、わたしは別になにも感じなかったな。
なんかもう2ちゃん辺りでは嵐になってますが、
でも、去年のエリボン杯なんてもっとひどかったじゃないですか。
去年に比べたら、今年のエリボンはぜんぜんましですよ。
最初のアクセル以外は、きちんと飛べているんですから。
(回転不足その他は別にして、きちんと着氷できているという意味)

たしかに3Aは失敗してしまいましたが、
でも、コンビネーションをはずさなかっただけ立派。
去年の彼女なら絶対にコンビネーションもつけられてなかった。
浅田選手は失敗をしても、
それを最小限に抑えようと努力しているのが本当によくわかります。


曲に関しても取り立てて悪いとは思いませんでしたし、気になりませんでした。
去年とはまったく同じでしたけれども。
でも、去年とは違ってからだのキレもよかったし、
スパイラルやスピンも悪くはなかった。
逆にとてもスピードが出ていてよかったです。
全体的にスピード、躍動感という点で改善があるんですよね。
これはやはり去年からやっているプログラムだということもあるかと思います。
あとはジャンプの精度を高めていけば問題はないと思いますね。

ただ、若干気になった点を上げれば、
いつものようにスパイラルやスピンのレベルが取れていなかったこと。
スパイラルに関しては、
これはJOのときから気になっていたんですが、
チェンジエッジが見られないんですよね。
たぶんやっていると思うんですが、
なんというか、素人目にははっきりわからないというか。
その辺がレベルを取りこぼしてしまった要因かなと。

これは今年の世界選手権から
けっこう厳しくチェックされているみたいで、
このあたりのレベルの取りこぼしが痛いかな~。
オリンピックシーズンなので、きちんとレベルを取っていかないと。
これは今回のSPでは悪い部分かなと。
ですが、ロステレコムで調整されるでしょう。

あとは、ジャンプ。
わたしは3Aがすごく気になります。
昨日でしたか。彼女の練習を見ていたんですが、
アクセルを失敗していて、それがJOのときとまったくおんなじ失敗の仕方だったんですよね。
なんか、軸がぐにゃっと曲がってしまったような落ち方をしていて。
ジャンプの調子があんまりよくないような気がします。
3Fの着氷もよくなかったし。
もしかして怪我をしているんじゃないでしょうかね。
なんか足をかばっているような感じがするんですが。
浅田選手は怪我をしても絶対にそれを周囲には漏らさない人です。
ですが、今年はオリンピックを控えた大事なシーズン。
あまり無理をしてほしくないというのが正直な感想です。

それと、やはり構成が少しいびつすぎますよね。
アクセルに頼りすぎている。
残念ながら浅田選手のアクセル成功率はそれほど高くはありません。
練習で7回跳んで4回成功させたという記事を見ましたが、
この成功率では正直、試合で投入したときもっと低くなるでしょう。
やはり練習の上でも百発百中でなければ。
それでも、本番では失敗することがあるのですから。

厳しい見方をしてしまえば、
浅田選手の考えは少し甘すぎるところがある。
確かに試合に出てやってみなければわからないところがあるのですが、
プルシェンコを見れば一目瞭然ですが、
彼が4回転や3Aを失敗することはまれです。
失敗したときは、彼の調子が悪いときだけ。
やはり高難度のジャンプを跳ぶからには、絶対的な精度がなければ・・・。

それと、精神的な面もちょっと・・・。
批判というわけではないのですが、
浅田選手は良くも悪くも器用な選手なんです。
なんでもよくできてしまう。だから3Aもすぐにできてしまった。
しかし、問題はその精度なんです。
ツーフット、回転不足等。
技術面がとても低い。というか、未完成。
少なくとも新採点法に対応できていない。
もちろんこのシステムの裏には浅田選手(というより日本の女子選手)を
つぶそうというもくろみがあってのシステムなので、
浅田選手の強さをことごとく剥ぎ取られてしまったのですが、
問題なのはそのあと。
浅田選手はそれを克服できると信じ込んでしまったこと。

キムヨナ選手と浅田選手のちがいは何か。
それは「限界を知っている」ということだと思います。
正直、キムヨナ選手は浅田選手ほど才能はありません。
アクセルはまったくだめだし、ループもだめ。
飛べるジャンプがあまりにも少ない。
しかし、自分の限界を知っているからこそ、
その限られた技で、最大限の成果を出そうとしている。
技を磨いて完成度を高めようとしている。
そのことが、新採点システムにぴたりと当てはまった。
そして、それが彼女を最強の選手にした。

かたや、浅田選手はどうか。
彼女は天才ゆえの「万能感」を持っている。
これは同時に彼女の弱点にもなって、
なんでも努力すればできると信じ込んでしまっている。
アクセルも練習すれば、ルッツの矯正も努力すれば・・・・。
しかし、凡人なら誰でもわかることですが、
いつかは自分の限界に気づかなければならない。
まあ、それに気づいてしまったら、もはや天才ではなくなるのですが。
でも、少なくとも努力をしてもできないことはあることを認めなければ。
要するに取捨選択ですよね。これができないと。
こういう子どもっぽい「万能感」が
彼女の才能を今ひとつ開花できずにいる一要因の気がします。

そういう欠点も含めて、浅田選手が好きなんですが。

浅田選手のプログラムは、良くも悪くも
旧採点的なんですよね。
すごく印象的で、心に残るプログラムなんだけれども
その一方で、技術面では大雑把というか、
スピン・スパイラルのレベルの取りこぼしが多かったり、
ジャンプでの回転不足が目立ったり等するという。
その間逆を行くのが、キムヨナ選手なのでしょうが。

ですが、わたしはキムヨナ選手のプログラムと浅田選手のプログラムと
どちらが好きかといわれたら、
有無をいわず、浅田選手と答えると思います。
浅田選手の演じようという強い気持ちがとても伝わってきたからです。
それがとても深く印象に残りました。

元来フィギュアスケートというものは、そういう競技だったのではないでしょうか。
技術的には確かに不足はあるけれども、
全体の印象のすばらしさや感動、そういったもので点数をつけていたはず。

しかし、新採点システムになって
確かにジャッジは判定が楽になったけれども、
その分観客にとっては見ていて面白いプログラムがなくなってしまった。

もしかしたら浅田選手は旧採点システムの最後の異形なのかもしれない。
また、新採点システムへのアンチテーゼを唱えようとしているのかも。

《続く》