2007/08/24

ロバスミ御大!!!


私がもっとも敬愛する天才の一人、ロバスミ御大のフジロックでの雄姿を。
すごいです。背後から妖気が漂っております!!!
人の領域をとっくに踏み越えて、魑魅魍魎の世界へと足を踏み入れております。
三輪○宏サンの一族の一人です。でも、マリマンの一族ではありません。
マリマンは彼の弟です(爆)。
ねね、すごいでしょ? museなんか比べものにならんでしょう(笑)?
もうヴィジュアルだけで十分勝ってます!!! 
フジで彼の姿を初めて見たひよっこどもはみなドン引き!!! しておりました。

《フジロック初参戦記'07 その6》その時僕らは伝説を見た。

これで最後です。

次のThe end of the worldが終わり、聞き覚えのないイントロが聞こえてくる。
この曲、何だっけ?と考えているうちに、いきなりの歓声と熱狂が。
ああ、「lovesong」かあ。
キーボードがいないから、なんの曲かと思ったよ。別にキーボードがいなくても、わたしはそれほど気にならないのだが、こういうときはやっぱりキーボードがいたほうがすぐになんの曲か分かっていいかもと思ったりする。
でも、キーボードがなくても名曲には間違いない。
ロバートは「however game I play~」と多少歌詞を変えて歌う。ロバってgameって言葉、好きだよねえ。
もうこの辺りからは怒涛の「disintegration」セット。
「pictures of you」に「lullaby」。もうオーディエンスは喜びまくり。やっぱ彼らが最盛期の曲だからね。でも、「disintegration」期の曲を歌うんだったら、わたし的には「disintegration」とか「prayers for rain」とか歌って欲しかった。
あの「prayers for rain」の絶叫、
prayers for rain~~~~~、お~おおお~お~おおお~お~お~~~
というのが聞きたかったしね。あそこがいちばんのハイライトだと思ってる。
でも、今日は「greatest hits」で行くって決めてるから仕方がないよね。
「lullaby」を終えて、ロバはギターを12弦ギターにもちかえる。
もしかして、just like heavenいくかあ~~~????
と思いきや、いきなり予想が外れて「inbetween days」。「the head on door」からのシングル曲。ロバの12弦ギターのカッティングが素晴らしい曲。最近、「ultraCURE」ギター一本で、すべての曲をやっちゃうから、なかなかアコギでは聞けないんだよねえ。やっぱりこの曲はアコギでなければと確信する。
そして、本日のハイライトにして、ファンの興奮が最高潮に達した「friday I'm in love」。
ロバはその前に「今日は金曜日だから特別に」みたいなことを言ったんだけれども、よく聞き取れなかった。
でも、狙い済ましてこの曲をやることに決めていたんだなと思う。
日本でとても人気のある曲だって知っていたんじゃないかな。
もう大盛り上がり。
わたしもつられて歌う、歌う。でも、実は自分、この曲あんまり好きじゃないんだよね(笑)。なんていうか、あまりポップすぎてCUREらしくなくて逆に好きになれない。
で、わたし的ハイライトは、次の「just like heaven」!!!!!
やっぱ、この曲ですよ~~~。12弦ギターのカッティングがひどく繊細で美しい曲。そして、12弦じゃなければ絶対でないメランコリックなロマンティシズム。最近は「ultraCURE」モデル・ギターでかなりハードロックな感じになっていたけれども、やっぱりアコギのほうがずっと美しい。
本当はじっくりと聞いていたいんだが、ファンの熱狂がすごすぎてじっくり聞けない。
この怒涛の三連発は本当にファンはみなやられてしまったというか、ほとんど狂喜の坩堝と化している。
そして、いきなり不穏なギターリフが鳴り響く。
待ってましたああーーー!!!!
やっぱコアなファンならこのセットだよねえの、「if only tonight we could sleep」。
ロバートとSIMONがお互いにギターとベースを突き出しながら、互いの旋律を確認しあうように弾いている。
そのあとはもう涙もんの「the kiss」。
めっちゃギターリフがかっこいいのなんのって。やっぱ、POAL加入のおかげなのか、TRIOGYのときよりもずっとタイトで、重厚で、早くて、かっこいい。ロバートのボーカルも冴えていて、声も伸びやか。
なかでも圧巻だったのは、最後のギター・ソロ。ロバートのギターが生き物のように、うねる、うねる。そして、伸びる、伸びる。それに、永遠に続くのではないかと思われるほど長い、長い。
ロバートは何度もSIMONに指示を出しながらも、ギターから眼をそらさない。
わたしはこのギター・ソロを聞いて、ロバートが非常にノッていることに気づいた。
そのあとの「shake dog shake」で見せた恐ろしいぐらい伸びやかなボーカルを聞いても、信じられないほどロバートがノッていることが分かる。
今日見せたギター・ソロは明らかに今まで聞いた「the kiss」のなかでも、ベストに近いんじゃないかな。そう思えるぐらいの素晴らしい演奏だった。
ロバートは今日のわたしたちの熱狂的な反応を見て素直に感動したんだと思う。
23年前日本でやったときは、日本人の反応のなさにかなり驚いたようだったから、23年前の日本と比べて、欧米のファンと変わらぬ、またはそれ以上の熱狂を見て、ロバートはすごく気をよくしたんだと感じた。
神のような天才的な才能を持つロバートだって、オーディエンスの反応は気になるに違いない。特に、前座のMUSEのあの熱狂ぶりを見て、自分たちがあそこまで受け入れられるかひどく気にしていたと思う。それにロバートは、日本ではまったく人気がないことも知っていたから、自分たちが演奏しても何の反応もしてくれないんじゃないかと密かに気をもんでいたのでは?
しかし、実際多くの若いファンの熱狂ぶりを見て、ロバートのなかで安心したんだと思う。それがあのすごいプレイになって表れていたんだと思う。それに出血大サービスっていうぐらいの「アリガト」連発と、いつもよりも饒舌なMCにもね。
この怒涛のマイナー・コードはまだ続く。
「shake dog shake」。この曲、23年前も日本でやったんだろうな。
たぶん、ちょうどこの曲が収録された「the top」が出たときに来日してたから、きっとその時の来日公演を見ているオールドファンには感慨もひとしおだったろう。
わたしもこの曲、大好き。すごくヘヴィーでかっこいい。ロバートは止められないほどノりまくっている。ボーカルも伸びる、伸びる。
Shaaaaaaa―――――――――――――――ke!!!!
って、すごいよ、ロバ。
ホント、ロバートって声がいいんだよなあ。
ふつう年をとってくると声が出なくなるもの。
でも、ロバートは全然そんなことはなくて、特にボイトレをしているわけでもないのに、恐ろしく声が出る。
この人、声の出し方というか、自分の声域というものをすごく知っているんだなという気がする。絶対無理な歌い方はしないし、それにそれほど難しいボーカルでもない(ロバートにとってはだよ)。
ロバートはきちんと自分がどの音域ならちゃんと声が出せるのかを計算して、作っているような気がする。ライブって本当にそのアーティストの技量がリアルに出てしまうというか、アルバムの出来がよくてもライブがしょぼいというバンドはすごく多い。特にヘヴィロックはそういう傾向が強い。いつもパワフルなボーカルを聞かせる、あのKORNのジョナサン・デイヴィスですら、だんだん最後のほうになってくると声量が落ちてくる。まあ、KORNの曲って転調が多くて、歌うことさえもかなり難しい曲が多いせいもあるんだが。
感動しながら聞き入っていると、前列の背の高い外人さんが動き出した。
いったいなに?
どうやら怒涛のマイナー・コードに飽きてしまい、帰るつもりらしい。
途中でうまい具合に、入れ替わった。
うっそーーーー。超最前列じゃん。しかも、やや右側の真ん中。SIMONとロバの中間あたり。
もう生ロバート見まくり。
「wrong number」にはびっくり。ていうか、ここまで徹底してやるかあ。どこまで行っても「greatest hits」セットなんだね。
この曲、欧米でもあまりやらないんじゃないかなあ。あんまりライブで聴いたことがないような気がする。
そういう意味ではすごくラッキーかも。
軽快なギターリフが、いなくなってしまったシンセをうまく表現している。後ろのPOALが直立不動のまま、黙々と弾いているんだけれども、彼の安定した、そして、確かなギター・プレーがロバートのソロ・プレイをよりいっそう伸びやかに、自由にさせている。
初めシンセ担当だったROGERが抜けたとき、シンセのないCUREなんてって思ったけれども、今日の演奏を聞いているかぎりではシンセ不在はまったく気にならない。
それどころか、シンセがないほうがずっと演奏が引き締まってかっこいい。
すごく残酷な言い方かもしれないけれども、やはりPERRYのギターはロバートにとって負担だったんだなということが、今日ライブを実際に見て、すごく分かってしまった。だって、ロバート、PERRYが弾けないところを代わりに弾いてあげていて、特に「open」なんか自分のパートも弾いて、かつ、PERRYのパートも弾いてってめちゃ大変そうだったもの。自分がソロで思う存分プレイできるところはなかったって感じだった。
それが今日のフジロックでは、信じられないほどギター・ソロを連発していて、彼の機嫌がいいこともあって、プレイが驚くほど生き生きとしている。POALという存在がいかにこのバンドでは(つまりはロバートにとって)大きいかということがよく分かる。もちろんPERRYはギターの弾けない分、人柄の良さでカバーしてたんだけれども。
でも、やっぱりロバートとしては、もっとギターをうならせたかったというのがずっと根底にあって、でもPERRYの腕前じゃだめだからとあきらめて、そして、自分に対してもどこか妥協していた部分があって、緩やかな衰退を選ぶっていうのかな。そういう部分が確かにある時期はあったんだと思う(それが最近「bloodflowers」からの曲をやらなくなった理由になっているのかも)。
だけれども、2000年に入ってニューウェイヴ・リバイバルがあって自分たちの音楽が再評価されるようになって、多くの若いアーティストたちがフェイバリットアーティストとしてCUREの名前を上げるようになって、ロバートの中でもう一度やってみようという自信を取り戻したというか。それがアルバム「the cure」であり、あの二人の解雇だったんじゃないのかな。
これはもしかしたら、再び「disintegration」のような第二期CURE全盛期が来るかもしれませんよ。
そんな期待をよそに、「100years」の選曲に超悶絶。
後ろの女の子のファンが「この曲、大好き!!」と飛び跳ねる。
わたしはこの曲はじっくりと聞きたいから、一生懸命柵につかまりながら、倒されないようにロバを見ていた。
照明が激しく明滅し、黒と赤のコントラストがめまぐるしく入れ替わるなか、ロバートの息が白いことに気づく。
ああ、ここ、すごく寒いんだ。でも、不思議と寒さは感じない。もうモッシュピット内は熱狂の嵐で、寒さなんてぜんぜん感じない。
ロバートはどうなんだろう? おそらくロバートも寒さは感じていないに違いない。
大画面に現れるロバートの顔には汗が滴っている。
 いやーー、この曲で盛り上がれるなんて・・・。若い子たち(てか自分もロバの初来日公演の年に生まれた若造なんですけど(汗))はロバートがなんて歌っているか知ってるのかな? 
 もう、すごい迫力で、圧巻。
前のMUSEのパフォーマンスが吹き飛んでしまった。こういう重厚さって、まだMUSEには出せないんだよね~。確かに、ギターを振り回すパフォーマンスはかっこいいし、クールなんだけれどもさ。その分深さや重厚さに欠けるというか・・・。なんか、世界の果てを垣間見てしまったような、そういう凄みはまだ彼らには出せないんだな。
遂にラストの「end」。とても自然な流れ。
ここでいったん終わって、彼らはステージを下がる。
もちろん長年待ち続けたファンは、これでは引き下がらないだろう。
何度も手をたたいて彼らが再び登場してくるのを待つ。
彼らは、わたしたちの期待通り、アンコールに現れてきた。
ロバートはスタンドマイクのほうに近づくと、マイクを取り上げ、またしてもわたしのいるほうに近づいてくるではないか。

Σ(゚Д゚ノ)ノ おおぉぉぉぉ――――――・・・・・・!!!!!

ステージのいちばん左端に向かい、なにやらファンの一人と話しているよう。
おそらくここで「I have no idea」といったのかな。ちょっと聞き取れなかった。でも、わたしにはファンの子と、次の曲、何をやったらいいのか尋ねているように見えた。
すっげー、なにそれ? 超うらやましい。わたしもロバと話してぇぇーーー。とか思ってると、ギターイントロがはいる。
「let's got to bed」!!!!
ロバート、奇妙なダンス(?)を再び披露。
このときのロバはすごくリラックスしているようで、とても楽しそうに見えた。
ロバートがステージの中央へと戻ろうとしたとき、偶然彼と眼があった。

ウヒャ━━━━━━ヽ(゚Д゚)ノ━━━━━━ !!!!!

わたしは馬鹿みたいにロバに手を振ったものの、ロバ、どうやら、わたしを見ていたわけではなく、前列のオーディエンスを見ていたよう。なんつうか、このヒトって、眼の焦点があっていないんだよなあ。誰かを見ているようで見ていないっていうか。
そういえば、「10:15 Saturday night」のPVでも同じように、眼がうつろだったなあ。
このヒトは、わたしたちと違う世界を見ているのだろうか?
ここからはまたしても、シングル連発、「close to me」「why can't I be you」。隣の外人さんも「close to me」には大喜び。激しくからだを動かしながら、踊っている。
そして、再び退場。
もちろん、わたしを含めファンはここでは引き下がりません。
ぜんぜんまだ曲やってねえじゃん。
わたしは大声で「Robert~, I wanna listen to a forest!!!!」と叫ぶ。
だってこの曲を聴くために、今日ここに来たんだよ。
You tubeで彼らの「a forest」を聞いて以来、cureのライブを絶対見たいと思っていたんだから。
まだa forestやってないよ~~~~!!!!!
そんなわたしの心からの叫びに隣の外人さん、大爆笑(笑)。
わかるけど、わたしたち日本人は、次、いつ彼らを見れるか分からないんだよぉぉぉ~~~。a forest歌ってくれなきゃ、死んでも死にきれん。
本日のアンコール二度目にもかかわらず、彼らは期待を裏切らず現れる。
もちろん欧米のフェスでは最低二回のアンコールは当たり前だから、彼らもそれを想定しているはず。ただ日本でこれほどのアンコールが出るとは思っていなかったかもしれないけれども。
SIMONのうねるようなベースが鳴り響く。

キタ━━━ヽ( ゚∀゚)人(゚∀゚ )メ( ゚∀゚)人(゚∀゚ )メ( ゚∀゚)人(゚∀゚ )ノ ━━━!!!!

そう、やっと、ようやく、ここまで辿り着いた。今日、わたしの夢がまさにかなった瞬間。
これ、やらなきゃはじまらないよ~~~~。
「close and see・・・・」
ロバートは囁くように歌い始める。
この苗場の山々に囲まれた緑溢れる場所で、まさに空気が一変する。更けてゆく夜。怪しく照らされる満月の光。照明は深い緑色。まるで深い森の中から彼らが現れてきたような、幻想的で、神秘的な、光景。
SIMONが例の腰を落とした姿勢で、ぶんぶんとベースをうならせる。POALの正確なカッティングと、JASONの完璧なリズムに、ロバートの深みのあるボーカルがかぶさる。
そして、クライマックス。
again and again and again.....
この曲を聞けたことに感動しつつも、その一方で、最近のあっさりめのヴァージョンにちょっと不満が・・・。
個人的にはロング・ヴァージョンが聞きたかったし、何よりもagain and again and again・・・の部分を「show」のころのように、シャウトし続けて欲しかった。歌が終わったあとの演奏もあっさり終わったし・・・。
まあ、アルバムに最も近いといえば、近いのかもしれないけれども。もしかして、「greatest hits」に合わせて弾いているのかな? 
みな誰もベースのリズムにあわせて手をたたかない。欧米のファンの間では、これまた約束なのに・・・。
しかし、最後の「boys don't cry」では、明らかに興味本位で見に来てた子達も大合唱。
ああ、これだけは予習してきたんだねえと思いながらも、もうこれで最後だと一緒に歌う。
歌が終わって、ロバートは再び「アリガト」、「ドモアリガト」と日本語を連発しながら、ステージの端まで寄ってきてお辞儀をし始める。初めはステージの左側から、はにかんだような顔をして、わたしのいるほうに向かってぎこちなく腰を曲げてお辞儀。次には左端によっていって、これまたお辞儀。

そのあとで、マイクに向かって「I’ll see you “3” years later・・・・」といったように聞こえた。
わたしは思わず、
うそ!! ロバート、また日本にくんの?  
と叫んでしまった。

ロバートを見れた興奮にすっかり頭が吹っ飛んでしまい、ちゃんと彼の英語が聞き取れなかったのだ。
 
ん? でも、まてよ。3年後ってなぜに3年後? 

もしかして3年後じゃなくて23年後か?

ろば~~~と~~~、あんたわ~~~~(怒)!!!!

と憤慨していると、後ろから
ロバートぉぉぉぉーーー!!!!
名残惜しげにロバートに向かって叫ぶ、ファンの声が・・・。
しかし、メンバーは全員ステージから去ってしまい、残ったのは機材だけ。
もうこれで彼らを見るのはおしまいだというのに、不思議と終わったという感じがしないのはなぜだろう。彼らとの時間は夢のようにやってきて、夢のように過ぎていった。そして、彼らは再びおとぎ話の世界へと帰っていった。
計26曲の、約2時間半のステージ。おそらく今までのフジロックフェスでは考えられないほど長い時間だったのだろう。
本日最後のライブが終わって、モッシュピットをあとにすると、そこらかしらにたくさんのペットボトルが落ちている。おそらくファンが無意識のうちに落としたものなんだろう。
各自ごみを捨てて帰ってくださいと係員からのアナウンスが聞こえるものの、まだ覚めやらぬ興奮にとてもそんな気になれない。
ステージからDJと司会が出てきて、本日一日目のステージが終了したことを告げる。
みなぞろぞろと帰ってゆく。
お祭りが終わったとでも言うように、さきほど会場に漲っていた熱気がうそのように引いてゆき、喧騒は苗場を取り囲む深い森へと掻き消えてゆく。
わたしはグリーン・ステージから吐き出される多くの観客とともにオアシスエリアへと向かって歩いていった。途中、大きな影のように木立がいくつも立ちふさぎ、わたしはまさしくa forestのように、その小さな森の中をさまよっていた。
まだ夢のなかに漂っていた。この余韻は当分冷めることはないだろう。
いや、もしかしたら、今度彼らを見るときまで永遠にその余韻のなかに沈んでいるかもしれない。
深い闇のなか、突然蛍のようにおぼろげな光の束が現れる。そこには色とりどりのキャンドルがたくさん並べられていた。
 わたしは記念にとすかさずカメラを構えた。
そういえば、ロバの写真撮ろうと思っていたのに、撮らなかったなあ。
ロバを見れた興奮でそんなこともすっかり忘れていた自分に気づく。
 2時間半という長い時間を共有したにもかかわらず、まだ足りない。もっと彼らを見ていたいという思いが胸に湧き起こっては消えてゆく。
 あまりの興奮状態にいたせいか、2時間半という時間の長さを感じなかったせいかもしれない。
 急におなかがすいていることに気づく。
 オアシスエリアで食事を購入するも、その場で食べることはできなかった。
 おなかがすいているにもかかわらず、なぜか食べる気力が起きないというか、夢のなかに漂っているようで、その夢から冷め切れなくて、ご飯を食べるどころではなかった。
 ふと周りを見やると多くの人々がやぐらに集まって、いろいろと談笑している。
 ついさっきグリーンステージではCUREのライブがあったにもかかわらず、このエリアでは、まるで初めからそんなライブはなかったかのような、別の喧騒に満ちていた。
時計を見る。
 もう既に一時を回っている。
 そろそろ帰らねばと思い、購入した夕食を持って出口へと向かう。
 足元がおぼつかない。
 歩いていることさえも分からない。
 興奮がさめやらない。
 たくさんの人が往来する。色とりどりの看板が並ぶ出店。さまざまなアトラクションやアート。
 昼間見たとき、こんなものがあったかと驚く。
 すべてが鮮明で、それでいて、現実とは思えない。
 昼間やってきたときに非常に長いと思われた出口までの道のりが、非常に短く感じられる。
 ふらふらと歩いていると、大きな駐車場が見え、たくさんの車が停車している。
 その向こうにはオレンジ色の明かりがいくつもともる大きな建物が見える。
 苗場プリンスホテルだ。
 おそらく今夜、彼らはここに泊まるのだろう。もしかしたら、もう帰っているのかもしれない。
 最上階の、おそらく彼らがいるであろう場所へと視線を向ける。
 ――また見に行くからね。
 そうだよ。全然見たりなかったよ。結局「play for today」もやってくれなかったし、「faith」や「in your house」や「at night」だって。もっとダークなセットで見たかったし、これじゃぜんぜんまだ足りない。
 やっぱり単独公演してくれなきゃ。
 それは無理なのかもしれないけれども、でも、彼らの素晴らしさは、あのポップチューン全開の「greatest hits」だけじゃないんだから。
 また会えるよね。
 いや、必ず来てよね、また日本に。23年後なんかじゃなくて、冗談じゃなく、ニューアルバムを出したらすぐに。
 その時は必ず飛んでゆくから、東京に見に行くから。東京でなくても、どこへでも必ずもう一度見に行くから。
 送迎バス乗り場まで長蛇の列ができている。わたしはその最後尾へと並び、バスを待つことにした。
 列に並ぶ多くの人たちは、それぞれの興奮を胸に、まだ覚めやらぬ熱狂を引きずっているようだった。
 ライブ会場にいるかのような熱狂がまだそこに漲っていた。
 列にしたがって歩いていると、黒髪長髪のゴスなルックスをしている女の子二人とすれ違った。
 後ろからさっき話していたCUREファンの子といっているのが聞こえた。
 そうか、この人たちもCURE見に来ていたんだ。
 そういえば、不思議とゴスな人たちはいなかったなあ。隣の外人さんもフツーの人だったし・・・。
 そのひとたちを見て初めてゴスな人たちも来ていたことを知った。
 きっとこの人たちもライブ、楽しんだろうな。
 やっぱもっと日本に来るべきだよ。あなたたちを待っている人は日本にはもっとたくさんいるんだから。
 と苗場プリンスホテルに向かって心の中でつぶやく。
 バスが次々と発車する。
 ようやく自分が乗る番となった。
 わたしは再び苗場プリンスホテルのほうへと眼をやった。
 また来てね。まっているから・・・。
 わたしはそう呟いて、バスへと乗り込んだ。
 こうして、フジロック初参戦の長い一日は終わった。

おわり