2009/07/18

真の天才とは?~エフゲニー・プルシェンコを見る ちょこっと脱線 その②の1~


《甘くはない復帰への道のり―長くなりますので2回に分けて書きます》


プルシェンコの最新映像がニコニコ動画に上がってました 

ワァ──ヽ(〃v〃)ノ──イ!!

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カナーリやせて、ほっそりしていらっしゃいます。
ここの合宿ではオフアイスでのトレーニングが中心で、
氷上トレーニングはあまりやっていないそうですが、
それでも、ジャンプ等の練習を欠かさずやっているようです(ニコ動画の説明より)
何でも4-3-3をやって見せたんだとか。

どんだけ宇宙人なんだよ (゚∀゚ ;)タラー って感じなんですが、

同時に、長いブランクを経た後の復帰の難しさをまざまざと感じさせるものでもありました。

ニコではファンの方の書き込みもあり、
非常に好意的・楽観的に見ていらっしゃる方が多かったのですが、

あえて悲観論的視点から、現在の彼の状況を捉えてみようかと。

もちろんプルシェンコ本人が復帰するというからには、
彼の決断を応援しますし
彼が復帰に向けてかなりのところまでレベルを戻していることは認めます。

しかし、それが今の採点システムに対応できるのか、
ほかの選手たちと対等に競争できるのかはまた別問題だと思います。

わたしはひねくれものな性格の持ち主なので、
盲目的な賞賛には、どうしても懐疑的になってしまうんです。

やはりここはファンだからこそ、
冷静な視点でプルシェンコの現在をとらえなければ
真の意味での「復帰」は語れないだろうと思うんです。

正直言って、わたしはニコ動でコメを上げている方たちほど、
彼の今の状況を手放しではほめられません。

さすがの天才・プルシェンコであっても、
年齢や怪我には勝てないのだなということをまざまざと感じさせられました。

ニコのコメにパトリック・チャンよりはSSは劣っているというのがあり、
ファンの人はプル下げはよくない的なことを言ってましたが、
これは単なるサゲでもなんでもなく、
ある面では、真実をついていると思います。

わたしも同じことを感じました。
あのレベルのままで行くならば、
ステップの面においてもPチャンに勝つのはむずかしいだろうと。

北米開催のオリンピックということになりますと、
嗜好はおのずと北米寄りになります。
北米のフィギュアにはジャンプよりも
スケーティングの美しさのほうを高く評価する風潮がありまして、
佐藤有香さんが北米で高く評価されているのも、
彼女のスケーティングゆえなのです。
(彼女はジャンプがあまり得意ではなかった)

プルシェンコのスケーティング技術自体は非常にレベルが高いです。
彼の強さは、ジャンプだけではなく、
スピン・ステップの一定のレベル以上のものを取れるという点にあるわけですから、
彼のステップに対して文句のつけようなどはありません。

しかし、彼にはひとつ、欠点があって、
それは、ディープ・エッジの使い方がやや浅いんです。
プルシェンコはその欠点をカバーするために、
スピードのあるステップを細かく入れているのですが、

このステップが果たして北米で受け入れられるかは
非常に難しい気がするのです。

前述しましたが、北米のファンはスケーティングを特に見ます。
しかし、スケーティングの上手さをどこで判断するかといえば、
細かいステップをたくさん刻むというのではなく、
ディープ・エッジをどれだけたくさん入れられるかなのです。

そういう点において、プルシェンコのいまのステップでは
Pチャンに劣るというのは、間違ってはいないと思うんです。

もちろんまだ7月ですので、10月のロシア杯までには
これから改善していければ間に合うかと思いますが、

しかし、それ以上にジャンプやスピンの面においても
克服しなければならない課題は山積みかと…。

まずスピンは、もう少しバリエーションを増やさないと厳しいですよね。
腰が悪いのでシットスピンを行うのは無理がありますが、
少なくともAスピンとか入れられるようにしないと
レベルは取れないんじゃないかと。
いまではどんな選手も簡単にレベル4を取ってしまいますしね。
より難度の高いスピンのバリエーションが必要です。

こういうときにビールマンが使えればいいのですが、
もうビールマンはやれないし、厳しいところですよね。


ジャンプも非常に厳しいです。本人は何の気になく跳んでますが、
個人的には、かつてのような回転にキレがないのがすごく気になる。
プルシェンコの強さを支えているものとして、
前回でも述べたように、
ジャンプの回転速度の速さというのを上げました。
あの異常な回転速度の速いジャンプが
高難度のジャンプをより高い確率で成功させていたのです。

そのジャンプの回転が遅く、そして、軸がぶれてきている。
4回転がつんのめったようになって降りてきてしまうのも、
回転が遅くなって、余裕がなくなってきているからです。
これは非常に危険な兆候です。

あと、個人的にはルッツが気になります。
4月の時点ではステップからのルッツを余裕で跳んでましたが、
なんとなく気になってしまう。
これも回転が以前よりも遅くなってきているせいかもしれません。

でも、以前よりはルッツの成功率も下がっているような気がします。

フリップのエッジの問題は逆に気にしてません。
最悪やらなければいいことです。
ループやサルコウに変えればすむことです。
現にリトアニアの合宿で、3S-3Tのコンビネーションを練習していたので、
もしかしたらフリップの代替なのかもしれません。

4Tに関していえば、最悪あきらめてしまえば、
3Aは余裕で飛べているので問題はないかと思いますが、
ただ、以前のジャンプと明らかに質が違ってきているので、
その質の面をどうやって克服するのかと。

プルシェンコは天才なので、そんな些細なジャンプのタイミングも
簡単に修正できると思ってしまいがちですが、
十年以上も同じ感覚・同じタイミングで跳び続けていたジャンプを
いまになっていきなり変えるというのは非常に難しいことです。