2008/02/29

夏の花・心願の国


高校生の頃、マニアックな小説ばかりを読んでいた。
他の子たちが太宰やら村上春樹やらにハマっていたなか、
自分だけマイナーな作家を読むことがマイブームになっていた。
伊藤整、野間宏、夢野久作など。
そして、この原民喜もその一人だった。
↑の写真は、彼の作品の一部を収録した短編集。

広島での被爆体験を持つ筆者でなければ書けない、
終末を思わせるような描写が特に眼を引いた。
私が彼を知るようになったのは遠藤周作を通じてなのですが、
なんでも遠藤は、原民喜の自殺に衝撃を受けて小説を本格的に書くようになったそう。
↑の作品には彼の遺書が掲載されていて、
当然遠藤のことも記されています。

この前押入れを整理していたら、偶然この本が眼にとまり、
思わず読み返してしまいました。

今改めて読んでみると、
高校生のときに読んだのとはずいぶん違う印象を受ける。
やっぱ高校生のときはよく分かっていなかったところがあったんだな。
いまになったようやく彼の書きたかったことが分かったような気がします。

最近日本文学全集とか読む人が少なくなってるから、
こういうマイナーな作家にスポットライトが当たることはないけれども、
良作を残している作家は多いです。
そのほとんどが絶版になっていますけれども、
ブック・オフとかにはフツーに100円で売ってるので、この機会に読んでみては?