2008/03/06

ドストエフスキーを読んで考えた。


この前、とうとう『白痴』を読み終えた。
実はこの本、あまりの難解さに、読んでは手を止め、
読んではやめをくりかえして、
読破するのに1年半近くも要してしまった。

ドストエフスキーは最も好きな作家の一人で、
『カラマーゾフの兄弟』を読んで衝撃を受けて以来
彼の作品をいろいろと読んでいるんですが、
この『白痴』だけはなかなか頭に入っていかなくて、
すごく困ってしまった。
『カラマーゾフ~』は3日で読みきってしまっただけに、
よけい……。
でも、すごくおもしろかったんですよね。
というより、彼の作品らしくすごく考えさせられました。

ムイシュキン公爵とナスターシャの二人の運命の残酷さに
ドストエフスキーは何をいいたかったのだろうかと。
『白痴』というタイトルをつけてはありますが、
ムイシュキンにしても、ナスターシャにしても
彼は『白痴』という言葉を本来の意味としてではなくて、
『世間に適応できないほどの純粋さ、繊細さを持つ人』という意味で使っている。
もしかしたら、アグラーヤも『白痴』なのかもしれないけれども。
だからこそ二人の純粋さが痛々しく、
ものすごく心に突き刺さるというか。
どうしてドストエフスキーは
ああいう悲劇的な結末にしてしまったのだろうかと。

私としては、ナスターシャは別にしてもムイシュキンだけは救ってほしかった。
長い闘病生活を経て(ここでもドストエフスキーはその純粋さゆえに、
世間に適応できず、精神的病で闘病を強いられたことを匂わせている)、
ようやく普通の世界(=世間、社会)へと出ることができたのに、
ふたたび病院へ逆戻りさせられるのは悲しすぎる。
しかも『発狂』という最悪の形で。

世の中にはムイシュキンやナスターシャのように
世間に適応できず、もがき苦しんでる人はたくさんいる。
そういう人たちを励ましてあげるためにも、
最後には何らかの『救い』がないと、やりきれない。
すごく後味が悪い結末というか。
もしかしたら、
だからこそドストエフスキーはみんなに世間というものについて
考えてほしいと思ったのかもしれないけれども。

最後のほうは読むのがすごくつらかったです。
アグラーヤがいきなり『純粋さ』を捨て、
『世俗』に走っちゃうところも。
もしかしたらアグラーヤは二人の悲劇的結末を見たからこそ、
二人のようになるまいとして、『世俗』を選んだのかもしれないんですけれども。

正直いってすごく長いし、難解です。
個人的には『カラマーゾフ~』をおススメしますが、
この『白痴』もかなりおもしろいです。
ドストエフスキーはなんでもいいから、
絶対一冊は読んだほうがいいと思います。
単なる『教養』としてではなく、単純におもしろいですから。
文学の本当のおもしろさを教えてくれる数少ない作品の一つですよ。

すごーい嘘つき!


昨日たまたま立ち寄った中古屋さんで、↑のCDが売ってたのですが、
300円という破格の値段だったので、早速買って家で聞いてました。

このアルバム、発売した当初買おうかどうか迷っていたんですが、
ちょうどその時読んでいた英雑誌『Q』のアルバム評で、
星★★と酷評していたので、「これまちょっとまずいなー」と
買うのをひかえておりました。

で、昨日たまたま安く売っていたので、
どんなに悪いアルバムなのかと聞いてみたら…、

めちゃめちゃいーじゃん!
いつものnew order節が炸裂していて、メロディもすごく良い。
確かにいつもの哀愁はやや後退しているものの、
その分、軽快さや華やかさが加わって、すごく聞きやすくなっている。
new orderはまだ聞いたことのない人には
おススメのアルバムになっているんじゃないですか?

それなのに、『Q』誌の酷評、なぜ?
いつものことだけれども、イギリスの雑誌って
こういうベテランのバンドに対しては冷たい気がする。


このアルバム評に対しても
「目新しいものは何もない」とか、「『technique』以降はいい曲を作ってない」とか
いいたい放題だったけれども、
なんでもかんでも『新しいもの』を作ればいいってわけじゃないし、
何よりもこういうベテランのバンドがみずみずしさを失わず、
平均して高いクオリティのあるアルバムを作っていられるってことが
何よりも大事なんじゃないの?

イギリスの音楽評論家は『新しいもの』『斬新なもの』に眼を奪われすぎ!
音楽とは何かという根本を忘れている!
音楽はなんでもかんでも新しいことをやればいいってわけじゃない。
時にはベテランの奮闘もきちんと評価してやることも必要だし、
一番大事なのは、『人を感動させる音楽を作る』ってことじゃないのかな?

イギリスに限らず日本の洋楽評論家、もしかしたら世界の音楽評論家たちは
そういうことを忘れてるんじゃなかろうか?

しっかし、洋楽雑誌のアルバム評ってホント当てにならない。
自分の気分だけで評価してんだから。
トレントだって音楽評論家はクソだと酷評してたしね。
なかにはアルバムの曲聞かないで、評論するやつもいるそうですから。
みなさんもあんまり音楽雑誌等の批評は当てにしないほうがいいと思います。
大事なのは自分の耳で、いいと思ったその感性なんですから。