2007/12/10

ヴァージニア・ウルフ

文学ネタを少々。
最近、↓の本を読んでいる。

最近といっても、以前も読んだこともあり、もう何回も読んだりしているんだけども、
この作品だけは飽きないというか。読むたびに新しい発見があったりして、よく読んでいます。

作者のヴァージニア・ウルフはイギリスの女流作家で、
ジェムズ・ジョイスとともに「新心理主義」、いわゆる意識の流れ文学を確立した非常に著名な作家です。
しかし、イギリスを初めとする欧米では非常に高い評価を受けているにもかかわらず、
日本ではあまり有名ではないというか、ジョイスに比べると評価はあまり高くない。
翻訳本が出てもすぐに絶版になっちゃうし、どうしてなのかはわからないんですが。
おそらく「女性」ということがネックになっているんでしょうね。
正直、女性で文学的手法を確立した欧米作家というのは日本ではあまり評価が高くないです。
シルヴィア・プラスもしかり。彼女は欧米ではフェミニズム文学の祖といわれているのですが、
日本では一部の文学者以外知られていません。
まあ、あまり日本では女性の外国人作家というのは高く評価されないものですが、
女性で、文学的手法を提唱するというのは、
女ごときが新しい文学の流れを主張するなんてどーよという意識が、
日本の文壇のなかにあるような気がする。
最近、女性作家の台頭が著しいとかいわれているけれども、
でも、注目されているのはどちらかというと恋愛文学をよく書いている作家だけで
笙野頼子とか多和田葉子みたいな作家は注目されていないような気がする。
二人とも文学評論家の評価は高いみたいですが。

日本の最近の文学には正直あまり関心がなくて、
むしろなんでこんなものが売れちゃうの~みたいな思いがすごく強くて、
特にわたしと同い年の綿谷りさや金原ひとみが芥川賞を受賞したときは
正直驚いたというか、あんな作品が賞をとれちゃうんだと
芥川賞のレベルの低さに逆に衝撃をうけたというか。
たぶん、本を読んでいる人なら分かるけれども、
綿谷りさは山田詠美の若い頃の作品にそっくりだし、
金原ひとみは逆に村上龍の作品にすごく似てるんだよね。
だから、まあ賞をとっても仕方がないといえば仕方がないんですが、
山田詠美と村上龍は二人とも審査員だからねえ。
自分と同じ文学傾向を持つ人を選ぶ気持ちは分からなくもないし。
それよりも、どうして村上春樹は芥川賞をもらえないのか
そっちのほうがずっと問題だと思うんですけれどもね。

と、最近の日本文学には覚めた目で見ているわたくしですが、
このヴァージニア・ウルフの作品はすごく面白いです。
とにかく彼女の視点が面白い。
普通、作品って主人公の視点を中心にして書かれるでしょ?
でも、彼女はいきなり自分(筆者)の視点から書き始めるんです。
映画のように遠景から始まってしだいに主人公にクローズ・アップされて、
そこで初めて物語が始まる。その描写がすごくて。
なんか違うなあと思って引き込まれちゃう。
すごく難解なんだけれどもね。意識の流れを扱う作家って基本的にみんな難解です。
ジョイスやプルーストもしかり。
でも、根気よく読んでいけばすごく面白いですよ。
文学って読みやすい、分かりやすいだけがいい文学だとは思わないの。
時には難解な、作者と格闘するような手応えのある作品を読むことも大事だと思うんです。
確かに読んだ当初はなんじゃこりゃって思うかも知れなけれども、
時が経つと筆者のいいたいことも分かってくるようになるし。
最近流行のケータイ文学とはまた違う面白さがあると思います。
一度難解な作品と格闘してみては?