2009/10/17

2009-2010シーズン到来 エリボン杯 女子SP 考察 その1



いよいよはじまりましたね、GPS。
といっても、まだ全部見ていないんですが。
特に男子。なんか波乱の幕開けだったようで・・・
でも、今シーズンはオリンピックという大舞台が控えていますからね。
昨シーズン以上に調整試合的な意味合いが強いはず。
たとえジュベールが不調でもそれほど気にすることのほどでもないのでは?
と思っております。
といっても、まだジュベールのSPを見ていないんでなんともいえないんですが。

パトリック・チャンがロステレコムを辞退したそうですが、
彼も当にGPSは捨ててますよね。
完全に照準をオリンピックに合わせています。
わたしもそれでいいと思います。
GPSのような金目的の試合の結果に
いちいち反応しているようでは身が持たないですよ。
いかにオリンピックで最高の演技をするのか。
それがいちばんの見所だと思っています。


で、早速女子のショートの感想を。
といいたいところですが、まだ全員のを見ていない・・・orz
なるべく今日中に見ようと思いますが、
いちおう主要選手、というか皆さんが最も関心のある
浅田選手、キムヨナ両選手の感想を。

まずは浅田選手のSPから。




浅田選手にしてはそこそこいい出足だったのではないでしょうか。
確かに最初のアクセルは失敗しましたが、
セカンドジャンプをいちおうつけて飛べていたし、
ほかのジャンプは失敗がなかったのですから、こんなものかと。
去年のエリボン杯に比べたらぜんぜんましでしょう。
むしろ、わたしは浅田選手の欠点よりも彼女の進化のほうに目を見張りました。

まず、ステップ。
去年のFPではいっぱいいっぱいで、
とちゅうで体力が持たずにへろへろになっていたステップが
今シーズンでは格段に改善されているところ。
とても体が動くようになって、すごくキレがいい。
生き生きとして、躍動感にあふれている。
2005年以来ではないでしょうか、
浅田選手があんなに生き生きとステップを踏んでいたのは。
浅田選手の体の調子はとてもいいと思います。
昨シーズン以上のキレのよさ、充実を感じる。

それに、スピード。
去年以上にスピードがよく出ていて、
停滞した部分が少なかったのもよかった点でした。
去年の課題がきちんと改善されていて、
改めて、浅田選手の努力には敬服しました。

ジャンプに関しては、わたしは別になにも感じなかったな。
なんかもう2ちゃん辺りでは嵐になってますが、
でも、去年のエリボン杯なんてもっとひどかったじゃないですか。
去年に比べたら、今年のエリボンはぜんぜんましですよ。
最初のアクセル以外は、きちんと飛べているんですから。
(回転不足その他は別にして、きちんと着氷できているという意味)

たしかに3Aは失敗してしまいましたが、
でも、コンビネーションをはずさなかっただけ立派。
去年の彼女なら絶対にコンビネーションもつけられてなかった。
浅田選手は失敗をしても、
それを最小限に抑えようと努力しているのが本当によくわかります。


曲に関しても取り立てて悪いとは思いませんでしたし、気になりませんでした。
去年とはまったく同じでしたけれども。
でも、去年とは違ってからだのキレもよかったし、
スパイラルやスピンも悪くはなかった。
逆にとてもスピードが出ていてよかったです。
全体的にスピード、躍動感という点で改善があるんですよね。
これはやはり去年からやっているプログラムだということもあるかと思います。
あとはジャンプの精度を高めていけば問題はないと思いますね。

ただ、若干気になった点を上げれば、
いつものようにスパイラルやスピンのレベルが取れていなかったこと。
スパイラルに関しては、
これはJOのときから気になっていたんですが、
チェンジエッジが見られないんですよね。
たぶんやっていると思うんですが、
なんというか、素人目にははっきりわからないというか。
その辺がレベルを取りこぼしてしまった要因かなと。

これは今年の世界選手権から
けっこう厳しくチェックされているみたいで、
このあたりのレベルの取りこぼしが痛いかな~。
オリンピックシーズンなので、きちんとレベルを取っていかないと。
これは今回のSPでは悪い部分かなと。
ですが、ロステレコムで調整されるでしょう。

あとは、ジャンプ。
わたしは3Aがすごく気になります。
昨日でしたか。彼女の練習を見ていたんですが、
アクセルを失敗していて、それがJOのときとまったくおんなじ失敗の仕方だったんですよね。
なんか、軸がぐにゃっと曲がってしまったような落ち方をしていて。
ジャンプの調子があんまりよくないような気がします。
3Fの着氷もよくなかったし。
もしかして怪我をしているんじゃないでしょうかね。
なんか足をかばっているような感じがするんですが。
浅田選手は怪我をしても絶対にそれを周囲には漏らさない人です。
ですが、今年はオリンピックを控えた大事なシーズン。
あまり無理をしてほしくないというのが正直な感想です。

それと、やはり構成が少しいびつすぎますよね。
アクセルに頼りすぎている。
残念ながら浅田選手のアクセル成功率はそれほど高くはありません。
練習で7回跳んで4回成功させたという記事を見ましたが、
この成功率では正直、試合で投入したときもっと低くなるでしょう。
やはり練習の上でも百発百中でなければ。
それでも、本番では失敗することがあるのですから。

厳しい見方をしてしまえば、
浅田選手の考えは少し甘すぎるところがある。
確かに試合に出てやってみなければわからないところがあるのですが、
プルシェンコを見れば一目瞭然ですが、
彼が4回転や3Aを失敗することはまれです。
失敗したときは、彼の調子が悪いときだけ。
やはり高難度のジャンプを跳ぶからには、絶対的な精度がなければ・・・。

それと、精神的な面もちょっと・・・。
批判というわけではないのですが、
浅田選手は良くも悪くも器用な選手なんです。
なんでもよくできてしまう。だから3Aもすぐにできてしまった。
しかし、問題はその精度なんです。
ツーフット、回転不足等。
技術面がとても低い。というか、未完成。
少なくとも新採点法に対応できていない。
もちろんこのシステムの裏には浅田選手(というより日本の女子選手)を
つぶそうというもくろみがあってのシステムなので、
浅田選手の強さをことごとく剥ぎ取られてしまったのですが、
問題なのはそのあと。
浅田選手はそれを克服できると信じ込んでしまったこと。

キムヨナ選手と浅田選手のちがいは何か。
それは「限界を知っている」ということだと思います。
正直、キムヨナ選手は浅田選手ほど才能はありません。
アクセルはまったくだめだし、ループもだめ。
飛べるジャンプがあまりにも少ない。
しかし、自分の限界を知っているからこそ、
その限られた技で、最大限の成果を出そうとしている。
技を磨いて完成度を高めようとしている。
そのことが、新採点システムにぴたりと当てはまった。
そして、それが彼女を最強の選手にした。

かたや、浅田選手はどうか。
彼女は天才ゆえの「万能感」を持っている。
これは同時に彼女の弱点にもなって、
なんでも努力すればできると信じ込んでしまっている。
アクセルも練習すれば、ルッツの矯正も努力すれば・・・・。
しかし、凡人なら誰でもわかることですが、
いつかは自分の限界に気づかなければならない。
まあ、それに気づいてしまったら、もはや天才ではなくなるのですが。
でも、少なくとも努力をしてもできないことはあることを認めなければ。
要するに取捨選択ですよね。これができないと。
こういう子どもっぽい「万能感」が
彼女の才能を今ひとつ開花できずにいる一要因の気がします。

そういう欠点も含めて、浅田選手が好きなんですが。

浅田選手のプログラムは、良くも悪くも
旧採点的なんですよね。
すごく印象的で、心に残るプログラムなんだけれども
その一方で、技術面では大雑把というか、
スピン・スパイラルのレベルの取りこぼしが多かったり、
ジャンプでの回転不足が目立ったり等するという。
その間逆を行くのが、キムヨナ選手なのでしょうが。

ですが、わたしはキムヨナ選手のプログラムと浅田選手のプログラムと
どちらが好きかといわれたら、
有無をいわず、浅田選手と答えると思います。
浅田選手の演じようという強い気持ちがとても伝わってきたからです。
それがとても深く印象に残りました。

元来フィギュアスケートというものは、そういう競技だったのではないでしょうか。
技術的には確かに不足はあるけれども、
全体の印象のすばらしさや感動、そういったもので点数をつけていたはず。

しかし、新採点システムになって
確かにジャッジは判定が楽になったけれども、
その分観客にとっては見ていて面白いプログラムがなくなってしまった。

もしかしたら浅田選手は旧採点システムの最後の異形なのかもしれない。
また、新採点システムへのアンチテーゼを唱えようとしているのかも。

《続く》