2009/08/16

2010 バンクーバー五輪 フィギュアスケート メダル展望-明暗を分けつつある? 浅田真央とキム・ヨナ その②-



《その①からの続き》

キム選手はエッジ対策としてコンビネーションジャンプを
フリップからルッツに変えるといっていますが、
これはあまりいいことではないような気がします。

なぜなら、キム選手はシニアに上がってほとんどといっていいほど
ジャンプの構成を変えたことがないからです。
3年間も同じ構成でやってきたものを
いきなり変えてしまうというのは、
本人の調子を逆に狂わせてしまうような気がするのです。

エッジ矯正の問題を抱えているにもかかわらず、
それに加えて、いままで慣れ親しんできた構成さえも変えなければならない。

これは思っている以上に大変なことではないかと。

それに、キム選手はそれほど器用な選手ではありませんから。

エッジの矯正というのは、思っている以上に簡単なことではないと思います。
あの浅田選手ですら、最終的にルッツを跳ぶことができなかったのですから、
浅田選手よりも不器用なキム選手が、果たして矯正をたやすくできるかどうか。

昨シーズン、キム選手のエッジエラーがさほど問題にならなかったのは、
逆に彼女を不利にしてしまったように思います。
もし2007年辺りにeがついていれば、
安藤選手のようにワンシーズン棒に振っても、
エッジの矯正ができたでしょうに。




一方の浅田選手ですが、調子ははかなりよさそうです。




まず驚いたのは、2:43辺りからの3A。
すごくきれいなジャンプ。まるでプルシェンコの3Aみたい。

いつも2Tのコンビネーションをつけるときに回転不足になりがちだった3Aが
きちんと回りきってから降りることができるようになっている!?

これは明らかに筋トレの賜物でしょうね。
浅田選手の3Aには、

①いつもツーフットで降りてきてしまう。
②どうしても、ほんの少し回転不足になってしまう。

という問題があったのですが、

これは筋力不足ということと密接な関係があって、
腹筋や背筋がきちんと鍛えられないと、
着氷したときにフリーレッグをあげられないまま、
両足で着氷してしまいがちになるそうです。

しかし、昨シーズンから筋トレを導入した結果、
筋力が鍛えられて、これらの問題点がすべて解消されました。


タラソワの戦略として、
まず第一に3Aを確実に跳べるようにするということがあったと思います。
しかし、昨シーズンまでは残念ながらジャンプの精度に問題があった。
もちろん成長期とぶつかってしまい、
ジャンプの軸がぶれてしまったということもあります。

タラソワは、その問題を筋力の不足にあると見抜き、
浅田選手のコーチになる代わりに、専属のトレーナーをつけるよう依頼しました。

また、より確実に飛ばせるために、
実際の試合でよりたくさん飛ばせる必要がありました。
タラソワは、おそらく、DGはあまり考えなかったと思います。
とにかく実際の試合に飛ばせて、きちんと着氷できるんだということを
浅田選手自身に実感させる、または、自信も持たせる。
そちらのほうが大事だと考えたように思います。

浅田選手はシニアに上がってから、
ステップからの3Aというかなり無駄な試みをしてしまった結果、
本当の3A自身も飛べなくなってしまってました。
そして、彼女自身もたぶんもう3Aは飛べないのではないかと
自信を喪失していたと思います。

しかし、タラソワはあえてひとつのプログラムで、
二つの3Aを入れるという難題を課した。
そうすることで、浅田選手の3Aへの自信を取り戻させ、
かつ、確実に飛ばせるよう仕向けたのです。

また、2回飛ぶということは、ひとつは3Aにコンビネーションをつけるということです。
そして、コンビネーションジャンプにできれば、かなりの強力な武器になります。
3A-2T、または3A-3Tは、
現役の女子選手のなかでできる人はいないのですから。
基礎点は高くなるし、決まればジャッジの印象は高くなるし、
かなりのメリットになるかと。

それらのことをすべて考えた上で、
昨シーズンは、あえて難しい内容の『仮面舞踏会』をやらせた。


タラソワという人は、フィギュア・ファンならご存知の通り、
オリンピックシーズン前は
鬼プロをやらせて選手を徹底的に鍛え上げさせることで有名です。
荒川静香さんしかり、クーリックしかり。

クーリックのオリンピック前のプログラムは本当に鬼ですよね。
イーグルからの3Aって…。プルシェンコでも見たことがないわ


これは余談なんですが、浅田選手ってクーリックに似てると思うんですよね。
浮世離れした雰囲気だけではなく、ジャンプの質とか、スケーティングのやわらかさとか。
たぶん、この二人は同じ質を持ったスケーターだと思います。

田村明子さんの『表情の光と影』という著書に、
「クーリックは神のごとくジャンプをする」と
ボイタノに解説されていたと書かれてましたが、
落下傘をつけて降りてくるかのように、ふわっと着氷するというのは、
浅田選手も同じですよね。
ふわっと羽が舞いあがるようにジャンプして降りてくる。
たぶん二人ともひざと足首が柔らかいんだと思います。
これはスケーターとしては絶対に必要なものらしく、
織田選手も奇跡のように柔らかいひざの持ち主なんだそうです。


実はタラソワが浅田選手のコーチを引き受けたのも、
そういうクーリックと似た資質を浅田選手に見出したためかと。

すでにクーリックを指導してオリンピックで金メダルに導いた実績がありますし、
似たもの同士であれば、同じ指導が可能です。

つべのこの動画にクーリックの筋トレの場面が出てくるのですが、
なぜか浅田選手の筋トレ場面を思い出してしまいました。

《ううっ、二つに分けても終わらなかった。また③へ続きます》

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